運用のしやすさ:これは単純に「使いやすさ」と表現してもよかったのだが、クラウドコンピューティングサービスにおいて「使う」ということは、単に人間がシステムとやりとりすることだけでなく、もっと多くのことを意味している。例えば、10社以上のベンダーに分散されたクラウド上に膨大な数のアプリケーションを展開している企業が、管理可能なサービスレベルで、それらのアプリケーションの監視と管理を行うには、どうすればよいかということだ。
確かに、傑出したユーザーインターフェースを提供する一部のプロバイダーは、他社と差別化を図ることができるだろう。しかし、プロバイダー間の最も重要な違いを決定づけるのは、API、パブリッシュとサブスクライブのイベントストリーム、透明性と監査のためのシステムなど、「舞台裏」のインターフェースだ。
今後、この「運用のしやすさ」の多くの側面が標準化されていくことは間違いないだろう。Open Cloud Computing Interface(OCCI)は、この課題の多くに対処しようという試みの一例だ。しかし、拡張、機能の質、そして一定のカスタムインターフェースによって差別化を図ることは、これからも可能なはずだ。
構成可能性:クラウドコンピューティング環境とは基本的に、インフラストラクチャとソフトウェアアーキテクチャのフレームワークであり、その上に構築されるアプリケーションアーキテクチャに大きな影響力を持つものである。これが現在のクラウドコンピューティング環境について、最も知られていることの1つだ。例えば、「Amazon Web Services(AWS)」の「Elastic Compute Cloud(EC2)」では、各サーバを1つの大規模な共有ネットワーク上に配置することができ、管理トラフィックが(少なくともOS側から見て明示的に)非武装地帯(DMZ)トラフィックから分離することもない。
しかし、アプリケーションアーキテクトが考えければならないのは、自らに与えられたインフラストラクチャアーキテクチャの中で、いかにアプリケーションを構築し運用するかということだ。このことを考慮に入れた優良な書籍も書かれているが、究極的には、ITによって解決したいと願っている問題の複雑さが、自社のインフラストラクチャシステム(サードパーティーからサービスとして提供されているとしても)に求められる構成可能性の水準に、大きな影響を及ぼすだろう。
これに関してIaaSベンダーが容易に改善できるのは、ネットワークアーキテクチャやデータストレージオプション、サーバオプションなどだ。セキュリティシステムやメッセージキューイング、ストレージの階層化といったインフラストラクチャを強化するサービスも効果的である。
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