筆者はこのような見解を「底辺への競争」理論と呼ぶ。
これと比較してほしいのが、クラウドにおけるコモディティ化はもっと細かいレベルで起こる、という見解だ。詳しく説明すると、テクノロジによってさまざまな構成要素や機能が標準化されるが、サービス自体を差別化することは可能であり、それは多くの場合、基本機能の上に大きな付加価値を付ける形になる、ということだ。
この理論は以下のように展開される。
アプリケーションの分野で、コンピューティング環境の一部の要素が、明確なインターフェースを持つコモディティになることが求められる。
クラウド市場全体で、基本的なコンピューティング機能に対する付加価値となる革新的なサービスが求められる。
そうなれば、クラウドサービスはインフラストラクチャ、メタストラクチャ、インフォストラクチャのさまざまな要素で構築されるようになる。サービスプロバイダーやエンドユーザーはこれらの構成要素を再結合して、さまざまな需要に対処することができる。
こちらの見解は、「底辺への押し込み」とでも言うべきアプローチだ。つまり、最も革新的なサービスは時間の経過とともに商品化され、やがてコモディティ化されるが、一方で、その基盤の上に新しい機能が開発され続けるということだ。筆者はこちらのコンセプトの方にはるかに大きな共感を覚えるが、そういう筆者の見方を偏っていると評する人もいるかもしれない。なぜなら、筆者は大手システムベンダーで働いているからだ。
しかし、それよりもはるかに重要なことに、サービスプロバイダーも後者の見解に大きな共感を覚えている。例えば、Amazon Web Services(AWS)について考えてみてほしい。Amazonは、「Elastic Compute Cloud(EC2)」(コンピューティングがコモディティ化へと向かう動きと言ってほぼ間違いないだろう)や「Elastic Block Storage(EBS)」、そして「Simple Storage Service(S3)」(コンピューティングストレージボリュームを商品化する2つの手段)に加えて、開発者や彼らが開発したサービスを使用する事業者を支援するために、さまざまな付加価値サービスも提供している。「CloudFront」「DevPay」「Simple Queue Service」などがそうだ。
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