すべてのプロセスをBusiness ByDesignに移管

Zipper Mediaは従業員100人の企業。SAPのSaaS「Business ByDesign」の最初の顧客で、2年半使い続けている。
従来は顧客管理や会計などの業務処理で別々のソフトウェアを利用していた。各ソフトウェアの機能に不満はないが、「全員がアクセスして正しい意思決定をするために、全体をカバーするシステムがほしかった」とZippel氏。そこで、Business ByDesignの導入を決めた。
現在、すべてのビジネスプロセスをBusiness ByDesignで動かしている。社員は必要なデータにアクセスして業務効率を改善、時間も短縮され売上も伸びたという。SAPの知名度もあり、新システムに対する社員の反応も良く、「実装時間も短く、きちんと動いた」とZippel氏は満足顔だ。
SAPはSAPPHIREの会期中、Business ByDesignを7月末に正式ローンチすると発表した。オンプレミスソフトウェアを利用している企業は、SaaSをどう見ているのだろう?
SaaSはコスト削減、ユビキタス性が魅力
ドイツ銀行のGaertner氏は「コスト削減などが魅力。動向を注視している」という。コアの銀行システムには利用しないが、標準的なビジネスプロセスでは利用できるかもしれないと考えているようだ。
Consol Glassのdu Plessis氏も、「標準的なビジネスプロセスでは可能性がある」と言う。だが、「セキュリティと機密情報が気になる。(導入の)障壁は技術的課題ではなく信頼だ」とも述べた。
一方、バーミンガム市のEvans氏は、「コストよりも、どこからでもアクセスできるという点にメリットがありそうだ」と語る。たとえば、高齢者の自宅を訪問した福祉担当者がその場で必要な福祉支援情報にアクセスするといったことが実現し、行政サービス改善につながると見ているようだ。
Evans氏はまた、部門間でのシステム共有にクラウドを活用できるとも考えている。現在約400ある地域機関は、それぞれにシステムを抱えるという縦割り型だ。コスト対策のためにも、クラウドを利用してサービスを共有するバーチャルモデルに移行できるのではないかと意見を語った。
SAP共同CEOのSnabe氏は、SAPのメッセージとして、イノベーションについて語った。「SAPはイノベーションを加速している。イノベーションとは、品質が出発点だ。単に新しいことを思いつくのではなく、それを顧客に届ける――運用環境で利用できるようにすることだ」と述べた。
SAPはERPと分析の両輪を持つオンプレミスに加え、オンデマンドではスイートのBusiness ByDesignに加え、オンプレミスの強化拡張をオンデマンドで利用できるようにする。これをさらにモバイル化することで、ダイナミックな環境を提供できるとした。