「Windows Azure Platform」:MSのクラウドについて開発者が知っておくべきこと

文:Justin James(Special to TechRepublic) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子

2010-06-22 08:00

 Microsoftが同社のクラウドコンピューティングプラットフォームである「Windows Azure Platform」(以降、Azure)を最初に発表した際、筆者はそれをどう評価すべきか判断できなかった。Microsoftはただ流行に乗り遅れまいとしているだけなのか、それともクラウドコンピューティングというパラダイムは本当にエンタープライズの使用に耐えられるものになっているのかといった疑問に答えを出すことができなかったのである。

 Azureが利用可能になったという発表の直後、筆者は関連情報に目を通してみた。しかし、基本的なことを理解していない筆者のような人向けに書かれた情報はほとんどなかった。また、残念なことにMicrosoftは、有益な情報をオンラインビデオとして公開するという、いつもの悪い癖を出してしまっていたのである・・・IT関係の仕事をしているのであれば、自分にとって必要な情報が本当に含まれているかどうか分からないビデオを3時間も4時間も見るだけの暇を持て余しているとでも思っているのだろうか。とは言うものの、筆者はこういった情報をふるいにかけ、Azureの正体と、Azureを用いた開発を支える基本的なコンセプトについて探り出すことができた。

Azureはプラットフォームである

 最初に、Azureという言葉自体は製品名ではなく、プラットフォームを構成する複数のサービスを包含したものであるということを理解しておく必要がある。現在発表されているサービスには以下のものがある。

  • Windows Azureサービスを用いることで、Microsoftのサーバ上にコードを配備できるようになる。このコードはローカルのストレージリソース(ブロブストレージやキューストレージ、テーブルストレージ)にアクセスすることができる。
  • Microsoft SQL Azure(以降、SQL Azure)はクラウドに配置されているデータベースが搭載している機能を提供するサービスである。このサービスでは、SQL Serverが提供しているようなTransact-SQL(T-SQL)を使用できるようになっているものの、完全なSQL Serverインスタンスが稼働しているわけではない(このため、SQL Serverに搭載されているすべてのストアドプロシージャが利用可能となっているわけではない)。とは言うものの、SQL Serverと統合することは可能である。
  • Windows Azure Platform AppFabric(以降、Azure AppFabric)というサービスバスを使用することで、LAN内のアプリケーションとAzureクラウドを連携させることができるようになる。つまり、このサービスによって認証やセキュリティといったものが取り扱えるようになるわけである。
  • 「Dallas」(コードネーム)は、Windows Azure上に配備されているアプリケーションやサービスのマーケットプレースである。

 Windows AzureとSQL Azureでは従量制の課金方式となっている一方、Azure AppFabricでは接続単位の課金方式となっている。これら3つのサービスはいずれも、データ転送で追加課金されるようになっている(すべての価格情報についてはこのページを参照のこと)。ただし、サービスレベル契約(SLA)に目を通してみると、率直に言って、ミッションクリティカルなアプリケーションに耐えられる内容だとは思えない(保証されている稼働率は99.9%となっている)。「99.999%」の稼働率を実現するには多額の費用が必要となるのは確かである。しかし稼働率が「99.9%」ということは、1カ月間に約40分間のサービス停止時間が発生し得るということを意味している。あなたの企業は、こういったアプリケーション停止を看過できるだろうか?それでは問題があるというのであれば、Azureの採用は見送った方がよいだろう。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]