論点3:iPhoneはまだ企業ユースに到達していないのか?
企業向け用途としてはまだまだ未熟と思われがちなiPhone。しかし機能面では、iPhone 3G発売の2008年7月時点で、法人向けサービスへの2大要件はすでに満たしていた。その2大要件とは、
- セキュアなアクセス
- ビジネスアプリとのセキュアな連携
だ。
「セキュアなアクセス」ではIPsec-VPN、「ビジネスアプリとのセキュアな連携」ではExchange Serverの同期機能であるActiveSyncへの対応を、初代3Gで満たしていたのだ。事実、情報セキュリティが命のグローバルコンサルティングファーム、ベリングポイント(現PwCアドバイザリー)は、2008年10月にiPhone 3Gを約1000台導入し、メールやスケジュールをどこからでも確認できるようにしている。
コンサルティング業務では、メールやスケジュール情報が持つ重要性が他業種に比べ格段に高い。グローバルで活動する大手コンサルティング会社がiPhoneに情報を託したことの意味は大きかったはず。企業向け端末としてはセキュリティに不足があると感じたとしても、その懸念はiPhone 3Gですでに払拭していたということを覚えておくべきだろう。
ただし、問題がなかったわけではない。それはセキュリティではなく、
- アプリケ―ションの動作が遅い
- 日本語を入力しづらい
- コピー&ペースト等の基本的機能がない
という、主として業務効率に関する点だ。意外な点が盲点となり、iPhone 3Gは企業ユースで使えないという声があがってしまった。
これらの点を一気に解決したのが、iPhone 3GSだ。ハードウェア性能の向上でアプリケーションの動作は快適になり、コピー&ペーストがサポートされ、外出先で情報を入力する際のストレスが大きく解消された。
――そうそう、企業向けユースでもう一つ大きな要件がある。それは携帯端末ならではの要件である紛失時のセキュリティだ。
au端末が、なぜ企業ユーザーに支持されたのか?そのキッカケとなったのは、端末紛失時にリモートで情報を消去できる機能だ。個人情報保護法の影響で、便利な携帯端末も一つ間違えば個人情報の塊という爆弾になってしまう危険があり、企業はリモートで情報を管理できる機能に飛びついたのだ。
この点ではソフトバンクが2010年3月から、iPhoneのデータを遠隔で消去、初期化できる「リモートワイプサービス」を法人向けSaaSとして提供することで対応した。Appleとソフトバンクが機能面において着実にニーズを満たしてきているのがわかるだろう。