オラクルのクラウドへの取り組み
続いて、基調講演として日本オラクル 常務執行役員 クラウド&EA統括本部長 三澤智光氏が「オラクルのクラウド戦略とお客様へのメリット」と題する講演を行なった。
同氏はまず、「オラクルとクラウドという組み合わせはあまり聞かないかもしれない」と前置きした上で、クラウドコンピューティングに対するオラクルの取り組みは「3つの立場」で行なわれていると整理した。「SaaSプロバイダー」「Public Cloudプロバイダーに対するEnabler」「Private Cloud構築に対する製品提供」の3つの立場である。
一般的には、オラクルはオンプレミス型のエンタープライズソフトウェアを開発/販売するベンダーだというイメージが強いが、買収したSiebelが取り組んでいたSaaS事業である“Oracle CRM On Demand”などの提供を継続している。これはつまり、同社が開発したクラウド対応プラットフォーム製品などを同社自身がユーザーとして活用するということになる。

三澤氏はまた、「世界で活躍している主要なパブリック・クラウド・プロバイダーの8割がオラクルテクノロジーを実装している」という数字を挙げて、パブリッククラウド事業者の事業を支えるソフトウェアを提供している実績を強調した。そして、同様のテクノロジーをユーザー企業が社内で活用するという方向性が「プライベートクラウド構築に対する製品提供」であり、この取り組みが同社としてのクラウド事業の中核になると三澤氏は語った。
同氏は、パブリッククラウドによって得られるメリットとして「俊敏性」「コスト最適化」を挙げる一方、企業内で利用される基幹系システムの特徴として「高可用性、高パフォーマンス、高拡張性、高セキュリティといった要件を総合して得られる事業継続性」とし、基幹系システムを即パブリッククラウドに置き換えることはできないとしても、「基幹系システムにパブリッククラウドのメリットを取り入れることで、より進化した企業情報システムへ」という考え方を打ち出した。
今回の基調講演では具体的な製品機能の紹介には踏み込まず、どの製品がどのようなメリットを実装していくことになるのか、といった部分は語られなかったものの、オラクルがどのような考え方をもってクラウドコンピューティングに取り組んでいくのか、という点に関しての方向性は充分に語られたと受け止めてよさそうだ。