つまり、パブリッククラウドにおけるオープンソースインフラストラクチャプロジェクトのユーザーは、クラウドプロバイダーしかいなということだ。クラウドプロバイダーは自らを責任あるオープンソースユーザーと見なして、恩返しをするかもしれないし、しないかもしれない。いずれにせよ、平均的なアプリケーション開発者がインフラストラクチャのコードを徹底的に研究する動機は、なくなったとは言わないまでも、かなり弱くなっている。
明るい材料もある。Rackspace、Terremark、Amazonといった「IaaS」企業は、ソフトウェアインフラストラクチャのかなり多くの部分(OSやミドルウェアなど)を顧客に任せているため、大半のプロジェクトにこの影響が現れるのは、まだかなり先の話だということだ。実際のところ、短期的には、急速に関心を集める可能性もある。
しかし、「PaaS」の提供が拡大し、法人開発者が抵抗の最も少ない道を選ぶことが多くなれば、ほとんどのクラウドインフラストラクチャが、クラウドサービスを支えるプロの運用チームだけでサポートされるようになるのも、時間の問題かもしれない。
筆者は、最終的に2つのシナリオのうち、いずれか1つが現実になると考えている。1つは、オープンソースのインフラストラクチャプロジェクトをエンドユーザー側からはっきりと目に見えるものし、さらに大きなコミュニティーによる革新を促す方法を、クラウドコミュニティーが見つけるというシナリオだ。もう1つは、そうしたプロジェクトの大半を、(競合企業として)差別化の機会を模索するクラウドプロバイダーだけがサポートするようになる、というシナリオである。後者が現実になった場合は、そのような企業にとってのオープンソースの利点が実際に消失し、オープンソースプロジェクトのさらなる分化、あるいは放棄さえも起きるかもしれない。
今後、これらすべてがどう展開していくのかは分からないが、共通のオープンソースのインフラストラクチャプロジェクトに積極的に寄与する企業の数は少なくなっており、それらの企業間の競争が激化する可能性に、筆者は期待している。今後、オープンソースが苦しむことになるのだろうか。それとも、クラウドサービスを利用するアプリケーション開発者が今後もオープンソースインフラストラクチャへアクセスできるようになる革新的な方法を、開発者コミュニティーが見つけるのだろうか。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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