「マレーシア、フィンランド、ウクライナ、セルビア、マルタ、モロッコ、シンガポール、ドイツ、タイランド、クロアチア、ニュージーランド、そして最後のチームは……ブラジル!」
国名を呼ばれるごとに歓声が上がり、呼ばれたチームが壇上に上がる。直前に発表された組み込み開発部門では、同じく日本代表として世界大会に参戦していた東京工業高等専門学校のチーム「CLFS」がすでに1回戦突破を決めている。PAKENのメンバーも、自ら壇上で日本の国旗を掲げる姿を想像していたはずだ。それが、最後まで「Japan」の国名は呼ばれることがなかった。4人は無言でその場を立ち去った。
大海を知った蛙たち
翌日には2回戦が開催され、12チームから決勝に進む6チームが発表された。決勝に残った6チームのプレゼンテーションは、参加者全員が見守る中、ワルシャワのオペラハウスという大舞台で披露された。
決勝チームのプレゼンテーションを見た金井氏はこうつぶやいた――「井の中の蛙が大海を知った」。

大海に放たれた4人は、一体何を感じたのだろうか。「見せることの大切さを実感した」(関川氏)、「PAKENのソリューションは面白いかもしれないが、一目見て理解できるものではなかった。そこで差がついたのではないか」(金井氏)、「思った以上にハードルが高かった。ビデオや写真、記事などを見て予測はしていたが、会場の空気や世界の学生のパワフルさなど、わからない部分も多かった」(石村氏)、「プレゼン力が劣っていたとは思えない。ソリューションの中身や見た目をより強化すれば世界に通じると感じた」(永野氏)と、4人は次々と感想を述べる。
感想だけではない。彼らは決勝に出たそれぞれのチームについても分析していた。「マレーシアのチームが披露したタッチパネル式のレシピ提案ソフトは市販ソフトと比べてもそん色のないインターフェースだった」「Windows Azureを使っているというチームがあったが、実際に使っていたチームはほとんどない。PAKENでは内部処理もきちんとやっていた」「永野が担当したアルゴリズムのシミュレーションは優勝チームにも負けない。アルゴリズムの見せ方を工夫すればよかった」「デモをビデオで流すチームもあったが、PAKENは実際に動いているところを見せた。ちゃんと動いているという事実をもっと評価してほしかった」
このほかにも、決勝チームのプレゼンテーションを見ながら4人はノートに山ほどメモを取ったという。「このメモをすべてドキュメントとしてまとめ、次回に生かしたい」と、リーダーの石村氏はすでに次のImagine Cupを視野に入れていた。
永野氏は言う。「優勝すると言っていたが、何も今年優勝するという意味で言ったわけではない。PAKENは有言実行がモットーだ」
PAKENのメンバーは、日本ではエリート中のエリートだ。もしかすると今回の1回戦敗退は、彼らにとって初めて体験する「敗北」かもしれない。しかし、彼らは世界に出ることで日本のトップが必ずしも世界のトップではないことを実感し、自分たちにさらなる伸びしろがあることを実感した。彼らを見ていると、伸びしろがあればあるほど伸びていくのではないかと感じる。大海を知った4人は、いずれ鯨になるのではないかと思えるほどの勢いで成長を続け、再びImagine Cupの場に戻ってくるに違いない。