村田:(CSSを所管する)W3Cの例でいうと、第1にボランティアですね。第2は、その分野に対し強い関心を持っている人。第3はW3Cスタッフ、と。いま現実として困難に直面しているのが、CSSで定義される「縦書き」ですよね。どれだけの作業量が必要か、ようやく私も把握しましたので。
海上:現在、日本人メンバーからのCSSにおける「縦書きサポート」の提案が難航しているようですが。
註:CSS Text Layout Module Level 3での縦書きサポート実現を目指すにあたり、村上真雄氏(HTML5 IG JP共同議長、JEPA EPUB研究会員)とともに論理プロパティを使用する方法でW3C CSS WGに働きかけたが、他のメンバーの反対により難航していた事情を指す。そのときのやり取りは「css3-text-layout(W3C)におけるウェブ縦書き議論の現場報告」に詳しい(流れをまとめた小形克宏さんに感謝)。なお、EPUBおよびCSSにおける縦書きサポートの最新動向は、村上真雄氏がまとめた「EPUB や CSS と日本語レイアウト HTML5 と電子書籍」に詳しい。
村田:理想的な結果をどこまで要求するのか、という話でもありますが、JEPAでとりまとめた要求仕様案では、縦から横へフォールバックしてもそれほどヒドいことにはならない(註:縦書き向けに組まれたスタイルシートは、縦書き未サポートのブラウザ/ビューアで見ても表示が崩れない)ということを、満足できなくなる、もしくは大変な苦労をして実質的に2つのスタイルシートを用意しなければならなくなる、そうなるかもしれません。
海上:どうして、縦書き対応がこのような状況になったのでしょうか?
村田:W3Cに入っている日本企業は、ほとんど名前だけというのが実情です。ミーティングにもお偉いさんが出てくるだけで、提案はもちろん、発言らしい発言がありませんからね。以前、ACCESSさんがテクニカルノートを出してうまく受け入れられたという良い事例もありますが。現在も何名か積極的な日本人メンバーはいますけれど、CSSの場合は縦書き関連の提案を除きほぼゼロかと。
W3Cにかぎらず、Unicodeのときもそうでした。むしろ、Unicodeのときのほうがヒドかった。実質、樋浦(秀樹、Sun MicrosystemsでI18Nアーキテクトを務めた人物、故人)さんと、小林(龍生、元ジャストシステムデジタル文化研究所所長)さんの2人でもっていたようなものですからね。
文化に影響を及ぼすような国際的な仕様が、現実としていろいろな団体によって決定されているのです。英語やフランス語は黙っていても問題ないかもしれませんが、他のもっとマイナーな言語がきちんとサポートされるというのは難しいです。
海上:どうしたらいいのでしょうかね……
村田:最近では、考えたこともないですね。こんなものだ、と思うようにしています(笑)
(続く)