#4【報告】:事実と推測を明確に区別して報告しているか
体裁よく能弁に語ることが「良い報告」ではない。大切なのは中身だ。特に、社内外で問題が起きたときの報告は、最も重要となる。問題解決へ向けてチームが一致団結するためには、関係者に向けた情報の正確なパスが必要となる。
報告は、事実と推測(あるいは自分の感情)を明確に区別して行わなければならない。「いつ、どこで、何が」事実として起こったかを正確に伝え、その事実を受けた自分の「推測」や「感じたこと」を明確に区別することで、報告を受ける側は的確な判断を下せる。これらがあいまいな報告は、結果として、報告を受ける側に無用な混乱を招いてしまう。
2008年の北京オリンピックの陸上400メートルリレーでは、塚原直貴選手、末續慎吾選手、高平慎士選手、朝原宣治選手で構成された日本チームが、銅メダルを獲得した。オリンピックのトラック競技で日本選手がメダルを獲得するのは、女子400メートルの人見絹枝選手以来80年ぶり、男子としては史上初ということで、日本中が沸いた。40秒という極めて短い時間の中でレースの勝敗を決めたのは、4人をつなぐ正確で素早いバトンパスだった。パスのスキルがチームの力につながった例として、これほどわかりやすいものはない。
#5【忠告】:勇気を持って効果的に忠告ができるか
忠告とは、真心を込めて相手の欠点や過ちを、戒め諭すことだ。これには、なかなか勇気がいる。しかも、相手が上司であろうが部下であろうが、忠告が必要な場合、その内容は、相手にとって効果的でなければならない。説得における「効果」とは、その説得を相手が受け入れ、納得することだ。そのためには、相手にとってベストなTPOを選択することが必要だ。また、その尊厳を傷つけずに真に相手のためになるフィードバックも行わなければならない。そうすれば、忠告されたほうも素直に聞き入れて、矯正しようという気持ちになるだろう。TPOをわきまえなかったり、直球のみを投げるだけでは、単純に非難して、自分のストレスを発散させているに過ぎない。まして、衆人環視の中でそれを行うなど、もってのほかだ。
江戸時代中期、肥前国鍋島藩藩士の山本常朝は、武士としての心得を「武士道」という用語で説明した。彼の言葉を田代陣基が筆録した古書が「葉隠(はがくれ)」である。常朝は、この中で諫言(忠告)について「諫言するにもいろいろな仕方がある。真心からの諫言というものは、人に気付かれないようにするものである」と語っている。効果的な忠告には、相手への心遣いが必要なのだ。