IDC Japanは8月19日、国内WANサービス市場について2009年の実績と2010〜2014年の予測を発表した。これによると、2009年の国内広域イーサネットサービス市場は、回線数ベースで27万4529万回線と前年比8.1%の増加、売上高ベースでは約2899億円で前年比10.6%の増加となった。IDCでは成長の主な要因として、専用線などのレガシー回線から広域イーサネットへのマイグレーションの継続や、データセンター利用の広がりなどを挙げている。
国内IP-VPNサービス市場の市場規模は、回線数ベースで79万2027回線となり、前年比6.7%増と堅調に推移したものの、売上高ベースでは約1682億円で前年比0.4%増の微増にとどまった。IDCでは、売上高の伸び悩みの背景として、IP-VPNセグメント内で高価なギャランティ型IP-VPNから廉価なエントリ型IP-VPN、またはインターネットVPNへのマイグレーションが多くあり、その結果、2009年にギャランティ型の市場が拡大から縮小に転じたことが挙げられると説明している。一方、エントリ型IP-VPNおよびインターネットVPNについては、新規需要に加え、こうしたマイグレーション需要も取り込み、市場は引き続き順調に拡大している。
また、今後の市場の成長についてIDCでは、広域イーサネットは2009年から2014年の5年間の年間平均成長率が2.8%、2014年の市場規模が3329億円、IP-VPNは同マイナス2.6%の1473億円と予測している。
IDC Japan、コミュニケーションズシニアマーケットアナリストの小野陽子氏は、「今後は、クラウドサービス市場の成長が見込まれる。通信事業者はクラウドサービス市場の構造を踏まえた戦略を推進すべき。たとえば、クラウドサービス市場でネットワーク事業の規模の経済性によって得られるコスト優位性を生かして低価格サービスを展開することや、他社のクラウドサービスに自社の回線を多く採用してもらうために回線サービスの納期の短縮やオンデマンド化に取り組むといったことが重要になるだろう」とコメントしている。