仮想化はあくまで、効用あるクラウドの実現までの道程の出発点であり、仮想化なしには、企業は大きな利益を得ることができないのではないだろうか。日本企業の場合、クラウド化はそれほど進んでいないとの指摘がある。しかし今回、来日して感心したのは、日本では、早い歩調で仮想化が良い形で採用されていることだ。
クラウドではベンダーロックインは起こらない
――OVFなどの標準が定まると、クラウドを利用しようという企業にはどのような利点があるのか。
パブリッククラウドへの移行について、エンドユーザーが抱いている互換性や管理性の点での懸念を解消することができるだろう。OVFが固まれば、互換性が確保され、クラウドサービスプロバイダーがvCloud APIをサポートすることで、ハイブリッドクラウドの管理ツールを作成することができる。クラウドを導入する企業もわれわれも、そのようなツールを利用できるなど、これらによりさまざまな利点がもたらされる。
――クラウドを導入するにあたり、企業側には新たなベンダーロックインが起きるのではないかという警戒感もある。vCloud APIがあれば、そうした事態は回避できるのか。

ベンダーロックインというのは、特定のクラウドの特定なサービスを利用したいとの場合に、起こりうると考えられるが、クラウドのどんな要素を使いたいかどうかで、事情は異なってくるだろう。vCloud APIの場合は、複数のクラウドにIT環境を分散するときに、それらを管理可能にすることができる。ベンダーロックインというなら、たとえば、ある企業がMicrosoftのWindows Azureを基盤に.NETで開発し、拡張するというような例では、ロックインになる。
クラウド化は必要に応じた段階的進行が最適
――北米企業は、クラウドのどのような点に特に関心が高いか。
当社が観察している動向として、米国ではプライベートクラウドへの関心が高いようだ。レガシーシステムを多く抱えた企業があり、それを放置したまま、パブリッククラウドに放り込むわけにはいかないからだ。多数のエンタープライズユーザーは、プライベートクラウド志向が一般的だ。直近の課題について、最も確かな回答をもたらすと受け取られている。北米では、既存システムへの不満から、プライベートクラウドを採用しようとの動きにつながっている。
――日本では、クラウドに向かう理由として、いわゆるオンプレミス型では新しい技術の導入に後れを取ってしまうとの見解もある。
同様の問題は、北米以外の地域でも起きている。既存のデータセンターの物理的な問題は、サイロ化していることだ。個々のアプリケーションごとに専用の技術を導入して、管理することが必要になっている。
しかし、クラウドでは、それが一変する。まず、仮想化により、インフラは収容能力を柔軟に増減できるプールとなり、次に自動化技術を適用すれば、従来人手で対応していた作業は仮想化インフラの上で利用できるようになる。
その次の段階では、ITサービス環境を追加すると、それらはオンデマンドでビジネスに利用できるようになる。このような段階を踏まえると、必要なアプリケーションをスケールアップしたり、新しい要素を容易に追加することが可能になる。