少し前のことになるが、「BusinessWeek」誌に掲載された記事で「The End of Outsourcing(As We Know It)」と題するものがあった。その内容はタイトルの通りで、従来型のアウトソーシングというビジネスモデルが衰退すること、そしてクラウドを活用した新しいアウトソーシングが成長することを論じている。その過程で、キープレーヤーもインドのアウトソーサーから、Amazon.comやGoogleのようなクラウド分野のスケールプレーヤーへ移行することを予想している。
従来型のアウトソーシングモデル
これは2000年前後からインドベンダーとともに成長してきたモデルである。低コストの人材を大量に確保することでスケールを出す。現在では大手の社員数は優に10万人を超える。しかし、組織の肥大化は、マネジメントの複雑化に繋がり、それを分断すれば逆にスケールが失われる。
つまり、人の数に頼ったスケールメリットはいずれ限界に到達する。そうした中で、インドベンダーにおいては、よりナレッジベースの高付加価値モデルへの移行が図られてきた。つまり、ビジネスプロセスアウトソーシングであったり、ソフトウェア資産の獲得であったり。しかし、その移行が完了する前に新しいビジネスモデルが急速に米国から現れたというのが今の状況であろう。
プレーヤーの転換
先の記事は、クラウドモデルへの移行する力を持たない中堅のインドベンダーは買収されると予想する。一方、Amazon.comやGoogleがアウトソーシングビジネスへ参入するには、顧客業務に関する知識が不足しているとする。
ただし、これらの企業は、提携や買収を通じて業務ノウハウを獲得し、アウトソーサーとしての地位を獲得しようとしている。具体的には、GoogleがComputre Sciencesと、Amazon.comがCapgeminiと提携したことが挙げられている。
また、記事では、これら新しいアウトソーシングプレーヤーとビジネスを行うことになる人材像にも触れている。つまり、これから企業のマネジメントを担っていくことになる人材は、GoogleやAmazon.comを日々の生活の中で活用してきた世代である。これらの人々が企業で働くようになると、こうしたサービスをを企業において使うことに大きな抵抗を持つことはないだろうと予測する。
クラウド型アウトソーシングの課題
人的規模の拡大は組織の複雑化を招き、どこかで限界がくる。かつ、人的リソースの確保が徐々に難しくなる中でコストの高騰を招く。一方、コンピュータリソースの拡大は組織の複雑化には直接は繋がらず、技術的な革新はさらなるコスト低減を可能にする。その分、規模の経済を獲得しやすいクラウドモデルが、従来型のアウトソーシングモデルを駆逐するという議論は説得力を持つ。
一方、コンシューマーとエンタープライズでは、求められるサービスレベルやノウハウが異なってくる。それを獲得するために大手クラウドベンダーは業界ノウハウを持つ企業との提携を進めているが、こうしたインダストリースペシフィックなニーズに応えていけるかが、新しいアウトソーシングモデルとしてメジャープレーヤーとなりえるかの境界となるだろう。
また、ビジネスプロセスに関わる部分では、ITだけでは解決し得ない人的リソースに依存する業務が付きまとう。これに対する解も今後用意することが必要だ。