今回は前回(「激動の時代に世界のCIOが注目する3つのポイント」)に引き続き、ガートナーのエグゼクティブ プログラム(EXP)グループ バイス プレジデントのJosé Ruggero氏と日本のEXPエグゼクティブ パートナーの小西一有氏に、日本のCIOの課題について伺った。
ITスタッフは“ビジネススタッフ”へ
――世界中の最高情報責任者(CIO)の活動を長年見て来られた立場から、CIOとして成功するための秘訣は何だとお考えですか。
Ruggero CIOとしての役目をしっかりと果たすためには、3つのポイントがあると考えています。「思考を変える」「IT投資に対するビジネス価値をきちんと示す」「IT投資が短期的にも長期的にもビジネスパフォーマンスに貢献できることをきちんと説明する」というのが、それです。
――1つめの「思考を変える」とは、どういうことですか。
Ruggero 端的に言えば、CIOをはじめとしたIT部門のスタッフも、営業などの業務系スタッフと同様、企業のビジネスに携わっていると。つまり、ITスタッフではなく、ビジネススタッフであると考え方を変えるわけです。
同じ視点で具体的な例を挙げると、これまでIT部門はITのユーザーである業務系部門を“カスタマー”として見る風潮がありました。とりわけ日本の企業にその傾向が強いかもしれません。
しかし、欧米企業のIT部門では最近、業務系部門を“パートナー”として見るようになってきています。そして業務系部門と同様、カスタマーとは自分たちの会社の商品やサービスを購入して利用してくれる、いわゆるお客様であるという認識をしっかりと持つようになってきています。
それは当たり前だろうと思われるかもしれませんが、これまでIT部門が業務系部門をカスタマーと見てきたのは、IT部門の方々なら思い当たるフシがあるのではないでしょうか。
――カスタマーではなく、パートナーとして見るようになると、どう違ってくるのでしょうか。
Ruggero 相手がカスタマーならば、要求されたことには必ず応えなければなりません。ただしパートナーならば、要求に応えなくてよいというわけではありません。肝心なのは、パートナーとしてお互いに協力し、“ビジネスパフォーマンス”を向上させていくことです。それこそが思考を変えることの目的でもあります。
小西 ビジネスパフォーマンスという言葉が出てきたので、補足説明しておきます。ビジネスパフォーマンスというと、売上高や経常利益などの財務成績だけにとらわれている方々が多いかもしれませんが、それに加えて顧客維持率、商品・サービスの開発期間、さらにはブランドイメージなど多種多様なものが対象になります。
とくに財務成績は企業活動の結果として表れる数字であって、将来的な企業価値を示すものではないことに注意しておかなければなりません。