実のある議論のために「Q&A力」をつける10の方法 - (page 3)

富永恭子(ロビンソン)

2010-09-22 15:00

#7:「枝葉末節」に正しい答えはない

 打ち合わせや会議の「生産性が上がらない」という場合、たいてい、その会議で「達成すべき目的」が明確になっていないか、目的実現のためには重要でないことに議論が逸れている。そうした場での質疑応答は、多くの場合、発言者の個人的興味、自分もしくは自分が所属する部署の立場でのみのものの見方など、枝葉末節をうんぬんするためのものになっている。

 細かいことに執着して質問を繰り返しても、本当に大事なことは見えてこない。ムダな思考とムダなコミュニケーションを積み上げて時間を弄するばかりで、正しい結論は出せないまま終わってしまう。もし、そんな質疑応答が繰り返される会議の中で「仕事の方向性」など決めようものなら、枝葉末節だけがアンバランスに肥大化し、膨大な非効率を生み出すような結果しか得られないだろう。

#8:大事なことは「差」ではなく「重さ」で測る

 では、質問で「大事なこと」はどうやって見極めればいいのか。

 「大事なこと」とよく勘違いされるものに「差」がある。人間は「差」に敏感だという。たとえば、音階を当てられなくても、2つの音のズレはすぐわかる。また、相手の身長が何センチかは当てられないが、2人が並べば、その身長差はわかる。

 質問も同様で、まず差に眼がいってしまうため、その差についての検討や議論に終始してしまいがちだ。しかし、大切なのは「差」ではなく「重さ」だ。例えば、顧客にとって大事なことは何か。この会議では何を決めることが大事なのか。自分の仕事で要求されていることの中で、最もプライオリティが高い大事なことは何か。差を見る前に重さを見ることが、効率的な議論の大前提であり、質問するときには、本当にその質問は「大事なのか」を考えることが重要となる。

#9:分析を加えることで「応答の論点を絞る」

 一方、分析を加えることで、答えの重要性を強調することができる。まず、もっともシンプルで基礎的な分析として、「積み上げグラフ」がある。1本の棒グラフをパーセンテージで切りながら、単純に重いものから順に下から積み上げ、全体を100とする。これによって全体が見渡せ、それぞれの事項の「重さ」が見えてくる。

 次にやるべきことは、見出された重要事項と他の事柄がどのようにつながっているかを見せるための「クロス分析」だ。これによって、大事なこととつながりの強いものを探し出していく。これを基本にして、さらに「全数分析」や「比較分析」を加えることもできる。分析を加えることで、その問題のポジションやスタンスに明確な裏付けを持たせることができる。これらの分析をもとに回答すれば、論点はグンと絞られてブレずに明確になる。

#10:プレゼンのシナリオとして「想定問答」も用意する

 プレゼン自体はうまくいったのに、質疑応答になった途端、オロオロとして、うまく答えられない人もいる。これは、プレゼン自体にはシナリオを作り、準備とリハーサルを重ねて挑んだものの、質疑応答の準備がすっぽり抜けて、パフォーマンスを発揮できないという典型だ。しかし、優れた戦略的プレゼンテーションを目指すのであれば、質疑応答も視野に入れたシナリオを事前に組み立てておくべきだ。

 具体的には、質疑応答のシナリオとして「想定問答」を準備しておけばいい。高等テクニックとして、プレゼンテーションの中にあえて突っ込みどころを残しておき、質問者を誘導するというやり方もある。質疑を通して新たな情報を与えることで、「このテーマについて、発表者は熟考しており、十分に理解している」という印象を参加者に与えることもできる。そして、思い通りの質問が出たときには、必ず「それは、いい質問ですね!」と質問者を褒め、自信を持って回答するようにしたい。

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