業務部門の御用聞きになってはいけない――。IT部門にとって古くて新しい課題だが、GartnerのリサーチディレクターであるDave Aron氏は、企業の戦略にITがどう貢献できるかをCIOは明確に説明する責任があると主張する。
今回は前回(「『マネジメントイノベーション』に挑戦すべし」)に引き続き、Gartner CIOリサーチプログラム バイスプレジデント兼リサーチディレクターのDave Aron氏に、同社の定点調査などを踏まえてお話を伺った。前回同様にガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム(EXP)エグゼクティブ パートナーの小西一有氏にも同席してもらった。
CIOは“御用聞き”から脱却せよ
――マネジメントイノベーションを推進するうえで、最高情報責任者(CIO)が果たすべき役割をどのようにお考えですか。
Aron CIOにとって最も大事なのは、自社のビジネス戦略をしっかりと把握し、その推進役を担うくらいの積極性を持つことだと思います。これは、私がこれまで多くのCIOに話を聞いてきたうえでの実感です。成果を上げているCIOに共通しているのは、自社のビジネス戦略に非常に敏感で、その中身を深く理解しようと努めていることです。
実は、その姿勢こそが、マネジメントイノベーションにおいてCIOが果たすべき役割の出発点となります。ただ、ビジネス戦略を理解しようという姿勢は、これまでも多くのCIOが心掛けてきたと思います。しかしながら、それを受けて経営層や各事業部門から出てきたIT化への注文をこなすだけの、いわゆる“御用聞き”にとどまっているケースが今も少なくないのではないでしょうか。
そうした注文に対応することも必要ですが、CIOの立場にある人はCEO(最高経営責任者)と同じようにビジネス戦略全体を深く理解したうえで、たとえば「注文を受けている、この部分よりもこちらを先にIT化したほうがより効果的ですよ、ビジネス価値を上げることができますよ」といったことをどんどん進言していくべきだと考えます。
――確かに、CIOやIT部門が社内の御用聞きにとどまっているケースが、今も多いかもしれませんね。それを打破するためには、ビジネス価値をより効果的に生み出すITの仕組みをもっと提案していくべきだと。
Aron 御用聞きにとどまっているCIOやIT部門の割合がどれくらいかといった確たる統計調査はありませんが、私の感触ではいまだ8割ほどが、そういう状況にとどまっているのではないかと見ています。
では、どうすれば御用聞きから脱却できるのか。先ほどCIOはビジネス価値を上げるための提案をどんどん発言すべきだというお話をしましたが、その前提として、経営層や各事業部門がITに何を期待しているのかをキャッチアップして、その期待に対してどれだけの成果を上げられるか、ということをIT部門としてしっかりと踏まえておくべきだと考えます。
そして、それに基づいてCIOが経営層や各事業部門長に、ITが生み出すビジネス価値を説いていくと。つまり、ビジネス戦略に対してITがどう貢献できるかを、CIOは明確に発信していく責任がある。それこそが今、CIOに求められている、果たすべき役割だと思います。