#3:Business acumen(ビジネス感覚)
アイデアだけではビジネスにはならない。アイデアやコンセプトを実現するためには、それを転換して実際のビジネスの現場で儲けられる仕組みと構造を考案し、実践するためのビジネスモデルを作り上げなければならない。そのためには、情熱や創造性とはまた違うセンス、つまり「ビジネス感覚」が必要になる。もっとわかりやすく言えば、それは「商才」だ。
この才能を生まれつき持っている人もいる。しかし、ほとんどの起業家は、生まれつき、この商才をもって生まれるわけではない。それは、これまでその人が人生で経験してきたことによって培われる。そこで特に重要なのは、失敗の経験だ。
成功したモデルを見ると、必ずしもその起業家がはじめて取り組んだ事業ではない。彼らの多くが幾度とない失敗を体験しており、そこからこの貴重な感覚を研ぎ澄ませた結果として、成功を収めるに至っている。日本において非常に成功している起業家の1人にソフトバンクの孫正義氏がいるが、彼のこれまでの事業経歴を見ても、その経験の中から現在のビジネス感覚を磨いて来たことは明らかだろう。
#4:Tenacity(粘り強さ)
成功する起業家は、絶対に諦めない。この「粘り強さ」が成功する起業家に共通している。
どんな起業家にとっても失敗はつきものだ。困難な状況に直面したとき、それを乗り越える粘り強さと精神力が必要になる。それが極めて強い人が勝ち残っていくといえるだろう。
それは「ポジティブ」とは意味が違う。ポジティブな考え方はもちろん大事だが、それはあくまでもスタイルだ。必要なのは、困難を何があっても打破しようとする特別な強い精神力であり、これは能力そのものだ。成功した起業家たちは、共通してその強さを持っている。
いまや「中国のヤフー」と呼ばれるほどに有名になったアリババドットコムの会長兼CEOであるJack Ma(馬雲)氏と私が初めて会ったのは2000年のことだ。当時、彼の会社は中小企業同士の取引をサポートするような小さなポータルサイトだったが、まったく儲からず、彼の収入はゼロだった。多くの投資家たちもMa氏のやっていることを理解できなかったらしい。
それでも彼は、働き詰めに働き、自分の可能性を信じて、そのビジネスモデルを貫き通した。それから10年、彼のビジネスは進化を遂げていった。そして、いまや、同社が運営する「Alibaba.com」は、世界間取引、中国国内取引、日中間取引の3つのサービスを展開し、世界240の国と地域で5000万人(2010年3月末現在)の会員を擁する世界最大級の企業間国際取引サイトとなっている。粘り強く徹底した追求が、彼を成功に導いたといえるだろう。
#5:Building Relationships&Networking(人間関係とネットワークの構築)
成功した起業家たちの多くは、さまざまな人的なコネクションを持ち、それをうまく結びつけてネットワーク化し、活用している。逆に言えば、「人間関係とネットワークの構築」に類まれな才能を発揮する人に成功者が多い。彼らは、ネットワークを構築するために努力を惜しまず、時間もかける。そして、構築したネットワークをためらいなく、積極的に活用する。
彼らは、ことあるごとに人に意見を求め、あるいは先輩起業家からコーチングを受け、悩みを打ち明けてアドバイスを求める。ただ、日本の場合は多少遠慮がちであったりするが、若干の違いはあっても、基本的に成功する人のネットワークの活用方法は、成功した起業家において世界共通だ。彼らはパーティや勉強会を催し、ことあるごとに交流する場を作って、熱心に人脈を広げている。
私自身、人と会ったり話をしたりする事にとても喜びを感じる。その時には、完全に没頭して、徹底的に楽しんでいる。こういった人との関わりや対話によって、私が相手に何らかの価値を与えると同時に、彼らからそれ以上の大きなエネルギーをもらうことができるからだ。同様に成功した起業家たちも、出会った人たちが持つ経験や知識、考え方などから、常に何かしら学ぼうとしている。彼らは、人々から学ぶことの価値をよく知っているのだ。