電子出版にまつわる機能をワンストップで提供
スマートフォンやタブレット端末といったハードウェアと、そこで流通するコンテンツの「フォーマット」「閲覧ソフト」などのソフトウェア。さらに「配信」のためのプラットフォームと「マネタイズ」といったビジネス面など、さまざまな変化によって、近年「デジタルパブリッシング(電子出版)」は大きな注目を集めている。
伝統的な紙の出版の世界で起こったデスクトップパブリッシング(DTP)という「革命」でも大きな役割を果たしたAdobeは、ウェブコンテンツの時代にもFlash Platformによって、そのリッチ化を先導してきた。
そして現在、「電子出版が大きな変革の時期を迎えている」という。Adobeがその変革の中にあるパブリッシャーをサポートするために準備を進めているのが「Digital Publishing Suite」と呼ばれるソリューションだ。
Digital Publishing Suiteは、コンテンツの作成、パブリッシュ、配信、マネタイズ、効果測定までを包括的に行うための一連の製品とサービスの組み合わせとして提供される。ビューワは「Adobe Content Viewers for iOS」および「Adobe AIR」をサポートしており、パブリッシャーは、これらを自社ブランドのアプリケーションに組み込んで配信することで、さまざまなデバイスで、一貫した読書体験を読者に提供できるとしている。
コンテンツの作成ツールは、「Adobe InDesign CS5」を含む「Adobe Creative Suite」が基盤となる。デザイナーは、これまでに蓄積したエディトリアルデザインのための技術や投資を流用しつつ、新たなタブレットデバイスなどに向けた電子出版へと移行していくことが可能だとしている。また、各デバイスへ向けたパブリッシュの仕組み、マネタイズおよび効果測定のプラットフォームは、Adobeよりホステッドサービスとして提供される。例えば、効果測定のためにSiteCatalystが強化され、電子雑誌がユーザーにおいてどのような読み方をしているかについての詳細なレポートが得られるようになるという。
Digital Publishing Suiteは、2011年第2四半期の正式リリースが予定されており、現在はベータ版として提供されている。開発はいくつかの出版社と協力して進めているとしており、基調講演では、先行してこのプラットフォームを利用したデジタル版の「WIRED」誌、「Martha Stewart Living」誌などが紹介された。ゲストとして、Martha Stewart氏と、Conde NastのCTOであるJoe Simon氏が登場。Conde Nastでは、WIREDのほか、New Yorkerなどの雑誌の電子版をこのプラットフォームで配信しており、デモでは、さまざまなデバイスや画面サイズに合わせて、テキストやグラフィックなどのコンテンツがダイナミックにパージされ、同様のルック&フィールを保って表示される様子が披露された。
なお、初日の基調講演では、このほかにも「ビデオストリーミング」「エンタープライズアプリケーション」「ゲーム」の分野におけるマルチスクリーン対応への取り組みが紹介された。その様子は別記事でレポートする。