堀内氏は、スマートコントロールを実現するために、IT部門はITのプロとしてユーザーに影響を与える「インフルエンサー」になるべきだと指摘する。一方的にITを押しつけるのではなく、ユーザーを導く立場になることで、「お互いが真のパートナーになれる」と堀内氏は述べた。
2点目のITダイナミズムとは、「ビジネスニーズの揺れ幅を許容せよ」ということだ。堀内氏は、ビルを例に挙げて説明する。「ビルを建築する際、長期間価値を下げないためには、ビルを構成するいくつかのレイヤに寿命の差があることを許容して建築することだ。例えばエレベータなどの設備はいつかは取り替えなければならないが、取り替えることを前提に建築していればその部分だけ取り替えればいい。そうでなければすべて建て替えることになる」(堀内氏)
建物と同様に、ITシステムで考えなければいけないレイヤには、記録のためのシステムと、差別化のためのシステム、そして革新のためのシステムの3つがあると堀内氏は指摘する。「記録システムとは、企業内のデータを管理するもので、人事や給与システムなどがこれにあたる。差別化のシステムとは、顧客管理やSCMなど、よりよいプロセスが見込まれるのであれば常に改善すべきシステムのことだ。また、革新のためのシステムとは、成功すれば市場でのルールさえ変えるようなもの。何が正解かはわからないが、例えばソーシャルメディアを使いこなすことなどがこれにあたるだろう」と堀内氏は説明し、これらのレイヤそれぞれにニーズの揺れ幅があることを認識すべきだとした。
3点目のインテリジェントビジネスとは、情報を戦略的に「資源」として加工するビジネスのことを意味している。堀内氏は、CIOが「Chief Information Officer」、つまり「情報の責任者」であることを指摘した上で、「CIOは情報から成果を生み出すことに責任があると考えるべきだ」と主張する。
「今の情報の使い方は、情報をレポートするのみにとどまっているが、単にレポートすればいいわけではない。情報は“資源”だが、加工しなければ“資産”にはならない。ただの黒い液体である石油が、加工することでさまざまな資産に生まれ変わるのと同じだ。CIOは、企業の戦略や目標の達成に寄与する情報を提供すべきなのだ。情報から価値を生み出すのがCIOの役目だ」(堀内氏)
これら3つの新しいルールをベースとして、企業は変革に対応していくべきだと堀内氏は締めくくった。