NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、「ICT for the Next Stage 〜お客さまと共に創る 新成長モデル〜」をテーマに、多様なICTソリューションを提案、紹介するイベント「NTT Communications Forum 2010」を開催した。
初日の基調講演では「NTTコミュニケーションズの取り組みについて〜お客様と共に創る新しい成長モデル〜」と題し、同社の代表取締役社長 有馬彰氏が講演した。
有馬氏は「クラウドコンピューティングに対しては効率化やコスト抑制などの点で期待が大きい一方、データがどこに格納されるのか、セキュリティ面、使用するネットワークの帯域、どのくらいカスタマイズできるのかなど、懸念の声が聞かれるのも確か。いまのところ、すでにクラウドを導入している企業はまだ1割弱に過ぎない。導入を検討している企業を含めても2割程度」と指摘。残り8割の企業が安心してクラウドを採用できるようにすることが重要になるとした。
同社が今後、クラウド領域で展開していくのはまず「ハイブリッドクラウド」だ。有馬氏は「クラウドについて不安を感じる向きも少なくないため、企業内のすべてのシステムをクラウド化するのは困難だろう。そこで、顧客情報を扱うシステムなど、特に高度なセキュリティが求められる要素は従来通りオンプレミスにして、会計処理のように――もちろんセキュリティは必須だが――ある程度の柔軟性が必要なところはプライベートクラウドでというように、全体的にはセキュアで本質的なサービスを提供していきたい」と、戦略を示した。
具体的なクラウドサービスとして、同社では「BizCITY」を用意しており、コンサルティングから運用保守まで、ICTのアウトソーシング、オフィス環境のユビキタス化など、幅広いサービスをワンストップで提供している。
有馬氏は、「BizCITYはネットワークやデータセンターがしっかりした基盤に基づいていることが大きな特徴」だと強調する。同社は国内68カ所のデータセンターを擁しており、面積はあわせて6万8000平方メートルに上る。「中でも首都圏の7つのデータセンターは、緊密に相互を高速回線で接続している。この7つのセンターは仮想的には一つのセンターのように利用することができる。サーバを分散配置しているため、災害時でも安全性が確保される」
グローバル展開では、全世界で29カ国、73都市に拠点があり、4900人の要員を配置。国内からの出向者は百数十人ほどで、大半はローカルの社員であるという。同社の国際IPバックボーンの回線容量は、日米間では360Gbpsに達しており、このバックボーンがサービスの軸になる。IP-VPNは世界159カ国で提供、複数拠点のLANをイーサネット網で接続し、ネットワークを構築するe-VLANは13カ国で展開している。グローバルデータセンターは、海外33カ所にあり、面積は3万6000平方メートルに及んでいる。同社では、アジア地域のデータセンターを強化しており、2013年初頭には香港に3つ目のセンターを設置、シンガポールでは2012年初頭に新たなセンターを開設する。
同社は、香港、シンガポール、日本の中核的なデーターセンターを高速ネットワークで結び「アジアン・トライアングル」を構築する。これをさらに米国のデータセンターと接続し、これらの地域内では国内とほぼ同様の感覚で通信ができるという。
同社のデータセンターは世界各地で着々と増強されているが、ICTの進展はそれを上回るような加速を続けている。有馬氏は「Twitterは以前から米カリフォルニアにある当社のデータセンターを利用しているが、Tweet数がたいへんな勢いで増大したため、ついに我々のデータセンターも一杯になるところまで来ている」と語る。同社の子会社で、北米での通信事業を担うNTT Americaは、カリフォルニアで2009年8月末に新データセンターを設けることを発表している。
有馬氏は「企業の抱える課題への対処、経営基盤の改善などに向けて、NTTコミュニケーションズはICTの側面からお手伝いをしていきたい。真の意味でのICTソリューションパートナーとして、顧客のビジネスをグローバルに支援し、共に成長モデルを構築していきたいと考えている」と述べ、講演を終えた。