仮想化環境 導入の未来編〜ユーザーが見据える仮想化環境の未来とは〜 - (page 2)

エースラッシュ

2011-01-11 11:00

信頼性と法対応の両面から
クラウド業者は国内を強く推薦

 ミッションクリティカルなシステムの仮想化を研究している参加者からは「仮にクラウド移行するならば国内企業を使うべき」と強い口調での主張があった。「特にアメリカで運用されているクラウドを活用することにリスクがあるからだ」という。

 その参加者からは、「FBIの要請があれば情報が開示されてしまう」「何かあれば軍事的に情報が凍結されてしまい、自社情報を取り戻せなくなる。日本企業として受け入れられない」との認識が聞かれた。

 また、実際に安価に大量のサーバを調達しようとした顧客の例を語る参加者もいた。

 「1000サーバを月500円で提供してほしいという要望に最初に応えたのはAmazonでしたが、利用当時は1000サーバのうち100サーバが止まってしまう状態でした。結局様々なクラウド業者と契約し、情報を集めた上でそのお客様が選んだのは国内業者です」という。国内クラウドベンダーへの信頼を高める契機となった、経験してみないとわからない貴重なエピソードだ。

社内でのコスト区分を明確にする手法を探求

 もちろん、仮想化によって大きく負荷が軽減された面もある。特に顕著なのは、サーバの調達にかかる時間と手間の低減だ。

 「20万円のサーバを調達するために、いくつハンコをもらわなけらばならないのか、という苦労を考えると非常に楽になった」「必要に応じてすぐに調達できる環境を経験すると、もう物理に戻ろうとは思えないし、戻る気もない」と、現場の人々は確かなメリットを感じている。調達にかかる時間が短くなったことで、開発スケジュールがスムーズになるといった効果もあった。

 しかし、手軽になったがゆえの苦労もあるようだ。
 「気軽にリクエストを出され、作るのは簡単ですが、約束通りの期限で落とすのは嫌がられたりします。もう少し様子を見させてほしいと言われるわけですが、サーバが立ち上がっている間は物理でも仮想でもパッチを当てる手間などは同じです」と管理負荷がある意味増えている様子もうかがえる。

 また、コスト意識が希薄になるという問題も指摘された。各部署からリクエストされて仮想サーバをたてるものの、物理的な資産がないために部署のコストとして認識されづらい。「ライセンスコストなどを計上することで、実際に徴収はしないもののコスト意識を持たせている」という手法などが紹介されたが、なかなか社内でのコスト区分を明確にするのは難しそうだ。

人材育成と心理障壁の解消が仮想化の発展課題

 全体的に「このままあらゆるサーバが仮想化され、運用が効率化される」という形での仮想化の普及については否定的な声が多い座談会となった。しかし印象的だったのは「技術はGoと言っている」という言葉に、多くの参加者が強くうなずいていたことだ。

 すでに海外ではミッションクリティカルなシステムの仮想化も進められている。国内でも一部の企業がアグレッシブに取り組んでいる様子が参加者の声からも垣間見えた。そうした事例が積み重なることで、後に続く企業が出てくることだろう。

   発展に向けた前向きな課題としてあげられたのは、人材の育成だ。「パソコン、ネットワーク、サーバ、ストレージの4つがわかっていないと仮想環境のシステムは構築できない」と断言した参加者もいる。従来は技術によって縦割りにされる傾向の強かったITエンジニアだが、仮想化時代においては積極的にローテーション研修を行うなど、全てに携わったことのある人材の育成が必要となりそうだ。

 特に、ハードウェアがめざましい進歩を遂げる中で、出遅れている感のあるストレージについては運用の工夫が必要な状態にある。セキュリティ面でも、ネットワーク側からのアプローチだけでなく、サーバ本体のセキュリティに目を向けなければならない。

 人材育成、心理障壁の解消、コストに関する誤解の是正など、現在は仮想化環境の発展に向けた準備期間であることが見える議論の場となった。

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