今回のDellとHPによる3PARの争奪戦は、Data Domainの買収時を上回る激しさで提示額が引き上げられていった。最初にDellが3PARに提案していた1株18ドルという買収額は、最終的にHPによって1株33ドルにまで跳ね上がったのだ。Dellに競り勝ったHPはその後、9月下旬に3PARの買収手続きを完了し、3PARでCEOを務めていたDavid Scott氏はHP StorageWorks部門のシニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャーに就任している。
Dellのストレージに対する思い
3PARの買収は断念したDellだが、ここ数年のDellの動きを見ていると、同社がストレージ分野を強化したいと考えているのは明らかだ。
同社は、2007年に発表したEqualLogicの買収が大きな話題となったが、今年1年の動きだけを見ても、2月にはNASソリューションを提供するExanetの買収や、7月にはストレージのデータ重複排除技術を提供するOcarina Networksの買収も発表している。なお、買収前の1月、ZDNet JapanはOcarina Networks セールス担当バイスプレジデントのEric Scollard氏にインタビューし、事業戦略について話を聞いている。Dellはその後、12月にストレージベンダーCompellentの買収を発表するなど、ストレージ関連ベンダーに次々と触手を伸ばしている。
Dellといえば、従来から提供しているPowerVaultブランドのストレージ製品と、買収で入手したEqualLogic製品に加え、EMCと長年にわたってパートナーシップを築いており、EMCのCLARiiON(日本ではCLARiX)製品ラインは「Dell|EMC」としてDellからも販売されている。そのDellが独自にストレージ分野の製品ラインアップを拡張しているわけだが、DellはPowerVaultを主にローエンド向けとし、EqualLogicをIP-SAN、Dell|EMCをFC-SANやNAS向けとしている。一部製品ラインが重複しているEqualLogicとDell|EMCについては、「顧客の規模やデータ量、ネットワーク構成、利用方法などによって最適なソリューションを提案している」(デル 広報本部)としており、「今後もEMCとの戦略的提携に変更はない」とのことだ。なお、2008年に両社はこれまでの契約を延長しており、少なくとも2013年までは現在の契約が継続することになっている。
一方、EMCは数年前よりAvamar Technologies(2006年)、System Management Arts(SMARTS、2004年)、Documentum(2003年)、Legato Systems(2003年)といったストレージ管理ソリューションを提供する企業を中心に買収しているが、同時にVMware(2003年)やRSA Security(2006年)などの企業も買収し、ストレージ専業ベンダーから脱しようとしているようだ。ただ、ここ数年はソフトウェア企業の買収に積極的だった同社も、2010年はデータウェアハウスソリューションを提供するGreenplumの買収を7月に発表したほか、NASベンダーIsilon Systemsの買収を11月に発表している。