業務プロセスの可視化が明らかにしたボトルネック
さて、今回の大阪支社における事案においては、現場でのヒアリングの結果、優秀な事務担当者がアサインされていたこともあり、業務自体に混乱はないことがまず確認できた。つまり、経理処理の遅れは、単に仕事の量が増えたために、マンパワーが足りない部分で発生しているというのが実態だった。合わせて、システムへの機能追加依頼も、妥当なものであることが確認された。
しかしながら、本当の問題は別の部分にあることに気づく。それは「出張して、その問題について現場に深くインタビューしないと状況が把握できなかったこと」にあるという。この「真の問題」を解決するためには、業務プロセスを可視化し、改善を検討するための資料を用意することが必要だと判断した。
「業務を可視化することで、関係者間でプロセスを検討する際のコミュニケーションに齟齬がなくなる。また、人員増強を行った場合の現場担当者の育成も効率的に行える」(大三川氏)
業務プロセスの可視化に合わせ、システム面では、部品や製品の売買処理が適切なタイミングで経理処理されること、先行情報の共有を充実させることをゴールとした追加開発を並行して進めていった。また、業務プロセス可視化の過程で、想像以上に「外貨支払い事務作業」が多く、そこが経理処理のボトルネックになっていたことが判明。急きょ、為替システムの機能追加を行うことも決断したという。結果的に、大阪支社では2009年秋以降の大幅な取引急増に混乱なく対応することができたのだった。
大三川氏は、業務プロセスの可視化による一番の成果を、「ある業務に関連する人々が、その業務の内容について、正確に同一の理解をするようになった」点だとする。
「業務上の問題が起きたときに、その問題を正確に把握して、どこにどのような手を打てばいいのかを、誤解なく社内で議論できる状態になっているかどうかが重要。今回は、情報システム室の人間が一歩現場に踏み込み、業務プロセスの可視化を積極的に進めることによって、お互いの誤解や理解不足を排除し、それまで見えなかった問題点を顕在化させた。全員が同じ理解をしながら改善に取り組めたのが成功のポイントだと考えている」(大三川氏)