EMCジャパンは1月26日、2011年の事業戦略について会見を開催し、1月1日付で同社の代表取締役社長に就任した山野修氏が「顧客をプライベートとパブリッククラウドへの旅に案内する」と、新たな戦略を紹介した。
EMCジャパンでは、これまで「顧客をプライベートクラウドへの旅に案内する」という戦略を推進していたが、2011年はプライベートクラウドのみならず、新たにパブリッククラウドも支援する姿勢を見せたことになる。山野氏はこの新戦略について、「これまでは大企業にプライベートクラウドを提供することが中心だったが、今ではハイエンド製品やスケールアウト型のNASなど、クラウド事業者向けの製品がそろい、パブリッククラウドも支援できる体制が整った。同時に、一般企業でもプライベートクラウドのみならず、パブリッククラウドも併用するケースが増えてきたためだ」と説明する。
「情報技術の世界では、メインフレーム、PCなど、約20年刻みでトレンドがやって来ているが、今はクラウドコンピューティングの波が来ている。それは、ITの維持費やデータの増大、環境と管理の複雑さといったジレンマを解決するためにクラウドが必要だからだ。EMCには、仮想化技術のVMwareや、セキュリティ技術のRSA、データ管理のDocumentumなどクラウドに必要な技術がそろっている。これらで顧客のクラウドを支援していく」(山野氏)
具体的な施策としては、「顧客のビジネス変革を情報インフラから支え、クラウドとビッグデータ(膨大なデータ量)への対応を支援する。また、ストレージのみならずバックアップやディザスタリカバリ、事業継続分野も支援する。そして、製品販売だけでなく、ITインフラの全体最適化に向けたコンサルティングを提供する」と山野氏。また、山野氏はEMCのイメージも変革したいとしており、「高信頼と高品質のEMCというイメージに加え、シンプルで効率的、お手頃なEMCというイメージを持ってもらえるようにしたい」としている。
EMCジャパンでは、新戦略に向けて社内組織も改革した。1月1日付けでRSAセキュリティをEMCジャパン RSA事業本部へと統合したことに加え、パートナーとの協業をより進めるため、ストラテジーアライアンス統括本部も設立している。
山野氏の社長就任と同時に代表取締役会長に就任した諸星俊男氏は、「これまでEMCはパートナー経由の販売が弱いと言われていたが、今ではパートナー経由の販売が大きい」と述べ、今後もパートナー向けプログラムの強化や、パートナーに適した製品を提供するとしている。パートナーに適した製品としては、過去に提供していたCLARiXブランドとCelerraブランドを統一したユニファイドストレージシステム「EMC VNX」の中でも、特にシンプルで低コストな中小企業向けエントリーシステムとなる「VNXe」を2月にも日本国内で発表する予定だという。
一方、Oracleユーザーの多い日本の顧客が、Sun Microsystemsを買収したOracleのハードウェア製品に移行する可能性も考えられるが、山野氏は「確かにEMCのユーザーにOracleユーザーが多いのは事実だが、EMCのストレージは数年先の技術を採用している。ストレージ業界でM&Aがさかんなのは、さまざまな技術が必要だからだ。その中でもEMCは突出した技術と製品を抱えている」と、自社製品に対する自信を見せた。また、「OracleユーザーもOracleのみを使っているわけではなく、ストレージプールの一部にOracleが入っているというケースが多い。すべてをOracleに統一したいのであれば別だが、顧客は(OracleやSAP、Microsoft Exchangeなどが混在した)ストレージプール全体の管理を楽にしたいと考えている。そこをEMCでは支援していきたい」と述べ、Oracleが直接的な競合となることはないとした。