#4:ライフサイクル
動画によるコンテンツは、その他の形式によるコンテンツと同様、明確なライフサイクルを設定しておく必要がある。動画ファイルの容量は極めて大きなものになりがちであるため、明確なライフサイクルを決めておくことは大規模企業にとっても経済面から言って重要な問題となるはずだ。例を挙げると、そこそこ大きな企業では1万時間以上に及ぶ社内制作ビデオコンテンツを抱えているという場合もあるのだ。これはストレージ領域に換算すると20~30テラバイトにも及ぶ可能性がある。動画の制作活動は活発化していくため、適切なライフサイクルを設定して保管の必要性を軽減しない限り、保管に必要なストレージはどんどん増加していくことだろう。
#5:ネットワークとの親和性
動画は企業のネットワークに混乱をもたらすおそれがある。ユニキャストによる配信という手法は、孤立したリモートサイト向けであったとしても、もはや選択肢にならないはずだ。動画を真剣に活用しようという企業の場合、ライブ方式のストリーミングであればマルチキャストを、またオンデマンド方式のストリーミングであればエッジキャッシュを取り入れる必要があるだろう。また、Adobe Flash Platformにおけるマルチキャストフュージョンといった興味深いアプローチも市場に登場し始めている。マルチキャストフュージョンは、IPマルチキャスト、およびピアアシストネットワークによるコンテンツ配信の信頼性の高さを組み合わせたものである。これによって動画の負荷は増大するものの、ネットワーク利用率の向上という光明が見えてくるはずだ。
#6:対象地域の洗い出し
Fortune 100に名を連ねる企業を顧客としてきた筆者の経験から言うと、世界各地に展開している企業におけるネットワーク帯域幅やインフラ能力は通常の場合、その展開地域によってさまざまとなっている。つまり、職場が遠く離れるほど、大量のビデオストリーミングに耐えられるだけの能力を備えていないのが一般的であるというわけだ。このことは、技術面と管理面の双方において問題となってくる。もしもすべての職場で同じように動画を視聴できるようにする必要があるのであれば、動画の展開プログラムを策定する際にインフラ上の制約に取り組むことになるはずだ。
#7:部門間の団結
企業において動画の展開プログラムをうまく実施していくうえで必ず出てくる究極の問題は、従業員が変化を受け入れられるかどうかということである。企業における動画の活用を成功させるにはたいていの場合、IT部門や、各部門のマネージャーたち、コンテンツ制作者といった、さまざまな利害関係者グループの間でコンセンサスを得ることが重要となってくる。各グループはそれぞれに異なったニーズや制約を抱えているため、各グループによるコストやテクノロジの問題への取り組みのなかで、動画が緊張関係の源となる場合も出てくるはずだ。このため、動画の活用という目標を達成するためには、合意と生産的な協力を取り付ける道を模索することが必要となってくる。