(前編はこちらです)
ワンクリを実現するためには、基幹系システムや既存の各システムとの連携、スタッフが手作業で作成するExcelやAccessのデータをどう連携させるのかなどの困難だが具体的な目指す姿が見えている。また、ワンクリが実現すれば、プロセスの中抜きや、ひとつの情報を全社で活用することで、資料完成までの“リードタイム”短縮と精度向上を見込むことができる。
ワンクリの中核には、ウイングアーク テクノロジーズが提供するビジネスインテリジェンス(BI)エンジン「Dr.Sum EA」を採用した。加えて、ブラウザ上でDr.Sum EAのデータを集計、分析する環境を構築するためのツール「Dr.Sum EA Datalizer for Web」とDr.Sum EAのデータをチャートやグラフなどのグラフィックイメージに可視化するツール「Dr.Sum EA Visualizer」、ウェブでの入力画面を開発するツール「StraForm」が活用されている。
ワンクリは2008年から本格稼働している。ウェブから入力された生産ラインの作業日報とIBMの「System i」(旧AS400)をベースにした基幹系システムから抽出された生産管理、購買、経理、人事などのデータはDr.Sum EAのサーバ上に蓄積される。蓄積されたデータはDr.Sum EA Visualizerでグラフ化されるとともに、Dr.Sum EA DatalizerでExcelにダウンロードして活用できるようになっている。
その仕事は必要か?
リコーユニテクノのIT部門になるITS推進グループは馬場保氏を含めて5人。そのうち「本当の意味でのIT屋は2人で、ほかの3人はITの専門職ではない」と馬場氏は語る。馬場氏自身も生産部門や技術部門を経てITS推進グループに配属した経歴となっている。ITの専門職ではないとしても、リコーユニテクノのビジネスの現場を理解している逸材だ。
ITS推進グループ主任の大鳥居優子氏もそうした逸材の1人だ。「(ITS推進グループに配属になったときには)『えっ、私が』というのが正直な感想です。複雑な思いがありました。パソコンや社内システムにそれほど詳しくないので、思わず『何かやる仕事はあるんですか?』と聞いてしまいました」(大鳥居氏)
そう語る大鳥居氏だが、入社後、購買部門に配属されてからは本社の生産部門や開発部門などを経験しており、ワンクリ導入を含めて全社横断での全体最適化を図るという今回の大きな施策には欠かすことのできない人物と言える。大鳥居氏は、複数の部門でさまざまな仕事の引き継ぎを経験していた。その中で「この仕事は必要かどうかを考えることがあった」という。
「正直に言うと、この仕事は本当に必要なのかと思うことは多々ありました。必要のない仕事がなくなれば、空いた時間でやりたい仕事が沢山あるのにと思っていました。日々、入力しているデータや、特に苦労して作ったデータが、日の目を見ないというのは辛いですよね。本当にこの仕事は必要なのか? この業務は誰かと重複していないか? を常に考えることで、KAIZENの意識が持てるようになりました」(大鳥居氏)
リコーグループでは「女性の人材活用が重要なテーマになっている」(経営管理本部本部長の鍋田利夫氏)こともあって、大鳥居氏はさまざまな部門を経験してから、ITS推進グループに配属されるようになっている。購買や生産、開発などの現場を経験している大鳥居氏は、課題を見つけ、全体最適を図る今回のプロジェクトには最適な人材と言えるだろう。