コミュニケーション力をさらに高めるための10のやり方

富永恭子(ロビンソン)

2011-02-24 14:00

 ハーバード医学大学院の研究者であるIsaac Kohane氏が、「研究者同士の物理的な近さが科学研究のクオリティに及ぼす影響」を調べた研究を発表した。この研究によれば、共同執筆者間の物理的な距離が近いほど論文のクオリティも高い傾向にあったという。

 この結果には、いろいろ見方もあるだろう。しかし少なくとも、あるひとつの成果物を生み出すにあたって、インターネットによる電子的なコミュニケーションが、まだ「物理的な近接性」に基づく従来のコミュニケーションに完全に取って代わる代替手段とはなり得ていないことを示す、ひとつの例であるとは言えそうだ。

 経験的にも、重要な新しいアイデアは、いまだに同じ空間を実際に共有する人々や、そこでの他愛もない会話から生まれているケースが多いと感じる。むしろ、インターネットが対面と同様にコミュニケーション手段として重視される時代だからこそ、両者を駆使して、お互いに伝えたいことを正しく伝え、理解できる、より深いコミュニケーションを構築する力が必要になっているのかもしれない。

 そこで今回は、自分の中に埋れているコミュニケーション力を強化するために意識しておきたい「10のやり方」を考えてみた。

#1:たくさんの情報を一度に伝えない

 昼に弁当を食べたとしよう。それが幕の内弁当なら、栄養バランスは抜群だし美味しいのだが、ひとつひとつのおかずは思い出せなかったりする。しかし、おかず一品勝負の「ステーキ弁当」なら、その肉の味は結構長い間、記憶に残っているものだ。

 コミュニケーションも同様で、一度にたくさんの情報を伝えようとすると、かえって重要な情報が相手の印象に残らなくなってしまう。特に時間が決められている会議やプレゼンでは、あれもこれもと欲張りすぎて、さまざまな情報を雑多に詰め込んだ話よりも、いちばん魅力的な部分にテーマに絞った話の方が、聞く側の関心を引き、相手の記憶に明確なメッセージを残すことができる。

 自分のアイデアを人に伝えるとき、そのアイデアに思い入れがあればあるほど、あれもこれもと多くを伝えたくなるものだ。しかし相手は、あなたの伝えたいことすべてを受けとめて、同じように理解することはできない。手広い守備範囲をアピールされても、特別な決め手がなければ引力は生まれず、結局は、ひと目でわかりやすく美味しそうな「ステーキ弁当」が選ばれる。相手を引きつけるために大切なのは個性や強み。それがチャームポイントとなり、訴求力を高めていくのだ。

#2:自分自身の「店構え」を決める

 自分の個性や強みを見つけるためには、会社の看板ではなく、自分自身の「店構え」を決めなければならない。

 まず、自分は何が得意なのか、どんなことを考えて仕事をしているのか、これまでの実績や成果には何があるのかなど、自分を棚卸ししてみよう。そして、自分自身のキャッチコピーやキーワード、簡潔なプロフィールを作ってみる。それらを作ることで、自分のスタイルや目標に合った「店構え」ができ、他の人からも明確に見えるようになる。

 いわば、自らコミュニケーションのステージを削りだして用意するのだ。そうすれば、そのステージで自分の個性や強みを浮き彫りにすることができる。

#3:伝えたいことを絵に描いてみる

 筋肉はバランスよく鍛えることが大事なように、コミュニケーションにもバランスは重要だ。たとえば会議でも、理屈は正しいがどこか魅力が足りないとか、分厚い資料をめくってもイメージが湧かないなどというときは、このバランスが偏っている場合が多い。

 バランスを整えるためには、論理的なコミュニケーションとイメージでのコミュニケーションの「反復横跳び」が必要になる。言葉だけのコミュニケーションは、ときに回りくどかったり、冗長すぎることがある。そんなときは、伝えたいイメージを即興でイラストとして描いてみるのもいいだろう。

 イメージから、それまで使われていなかった思考や感性が刺激され、それをきっかけに新しい議論が始まる。つまり、論理的思考と感覚とを往復させることで、コミュニケーションが活性化するのだ。もちろんビジネスの現場では、最終的には理詰めで検証する必要もあるだろう。しかし、そこまでの過程で、この反復横跳びがあるのとないのでは、だいぶ結論も違ってくるはずだ。

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