震災から2週間、被災地はもちろんのこと、首都圏においても未だ日常は戻っていない。今回の災害は、国内はもとより海外でも大きく報じられ、海外からも多くの応援のメッセージを頂いた。その中には、こうした未曾有の震災に見舞われた人たちが気丈に助け合う姿に日本の強さを見出し、日本が必ず復活することを信じるとするものも多い。
今回の震災は、日本企業が急速にグローバル化を推し進める最中に起きた。そのグローバル化とは、辛辣な言い方をすれば、成長しない日本を見限って、海外の成長市場で儲けようという流れだ。
しかし、新興国が急速に追い上げを見せる中、日本の強さやアイデンティティというものが改めて問われていた。そんな中に起きた今回の震災は、改めて日本というものを考えさせる契機ともなる。
震災が日本に与える打撃は大きい。しかし、世界の市場から取り残されつつある日本は、今回の震災を通じて改めて、その強さがどこにあるのかを示したのではないかと思う。
それは品質であるとか、技術力であるとか、コストであるとか、いずれ真似することができるようなところにはなく、その根源は危機に際しても辛抱強く助け合う国民性にある。これは、決して真似のできるものではない究極の競争優位性である。
一方で、東京市場の株価は大きく下落し、投機筋が為替市場を攪乱している。そして、日本経済のGDP予測は引き下げられた。多くの外国人が日本から避難し、経済活動が沈滞化しようとしている。今、被災地に対して直接的にできることが限られているが、日本の国力をこの危機に際して沈滞させないこと、これも我々にできることの一つである。
“Business As Usual”、危機に際してもパニックを起こさず、普段の生活、普段の仕事を止めない。これは特にインフラであるITを担う者の責務である。そして海外の予測を裏切る成長を原資として被災地を復興させる。日本人は強いのである。
東日本大地震により被災された皆様、ご家族、関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。