たとえば自動車メーカーがアナリティクスを導入すると、販売台数だけでなく「なぜ売れたのか」あるいは「なぜ売れなかったのか」といった理由まで把握することができる。このように分析力を高めることで、たとえば企業のマージンが3%アップするといったメリットがあるという。すでに20%のマージンがある場合はそれほどでもないが、マージンが5%だった企業で3%増えることは大きい。これが差別化要因になるという。
先ほどのデータプラットフォームもアナリティクスに有効な概念だ。データはこれまでも重要であったが、従来のシステムでは分析のためにDBからデータを取り出す必要があった。これにはETLツールを使用していたが、この作業が分析の工数の約6割を占めていたという。
しかし、この2年間でCognosやBusinessObjects、SPSS、Hyperionなどのアナリティクス企業が次々にIBMやSAP、Oracleといったプラットフォームベンダーに買収されている(関連記事1、関連記事2)。これにより、基盤にアナリティクスがすでに組み込まれ、ETLツールが不要になってきている。抽出のプロセスがなくなるということが起きようとしているわけだ。
「アナリティクスを実現することで、ITがただ単に業務側をサポートするだけのツールから、業務側に対して付加価値を与えるものに変わります。そこでAccentureでは、新しいソリューション『Accenture Analytics』の提供を開始しました。すでに現在約1000人に使用していただいています」とSwaminathan氏は言う。
クラウドコンピューティングはインフラより上位層で、さらなる価値をもたらす
ハードウェアのレベルはコモディティ化しており、帯域や処理能力は容易に入手可能になっている。クラウドの本当の価値はそこにあるのではなく、より上位層、つまりSaaSやPaaSの部分に広がってきているとSwaminathan氏は解説する。IaaSがコモディティ化し、PaaSやSaaSが重要という流れについて、日本では戸惑っている印象があるが、これに対してSwaminathan氏がこう説明する。
「現時点では米国も同じような印象がある。しかしこれは近く変わる。企業はプラットフォームとしてSaaSを複数のサービスと統合していくようになるだろう。企業がファイアウォールの外で自社のアプリを使っている点が重要なポイントだ。通信会社も今は帯域を提供しているだけだが、今後はその多くがデータセンターも提供するようになるだろう」
これからのアーキテクチャは“サーバ中心”から“サービス中心”へ
これはソフトウェアとハードウェアの関係の変化に関する見方だ。一般的に、システムが構築されるとソフトウェアの寿命は30~40年はある。だがハードウェアは、「ムーアの法則」が示すように18カ月で速度が2倍に向上する。つまり、ハードウェアの変化の速度とソフトの変化の速度は切り離されている状態だったが、これまではあまり問題視されていなかった。
最近まではハードウェア側に制約があって、ソフトウェア側に十分な能力を提供できていなかった。しかし、ハードウェアの処理能力はここ数年間で非常に向上してきている。いろいろなハードウェアアーキテクチャが可能になったためだ。つまりグリッドやクラウド、マルチコアプロセッシングといったハードウェアが登場し、ソフトウェアのドライバとして機能している。