ネットワーク経由でバックアップデータを転送すれば、物理的な手動によるやり取りが排除されるので、このような懸念はなくなるが、膨大なデータを転送するためのネットワークの確保がネックになる。転送スピードが遅いと、決められた時間内にバックアップが終了できないことがある。
重複排除技術を利用することで、ネットワーク経由のデータの転送量を少なく抑えることができるため、低コストでネットワーク経由でのバックアップやストレージの複製(レプリケーション)が可能になる。
(1)ストレージのレプリケーションに重複排除を利用
重複排除ストレージには、重複排除されたレプリケーション機能を搭載している場合がある。また、NetBackupとBackup Execにはどちらも、一般的なストレージを使って重複排除でのレプリケーションの機能が用意されている。

(2)クライアントで重複排除し、遠隔地にバックアップ
クライアントでの重複排除を使うと、小規模な支社が点在するような企業では、設備として堅牢な本社設備やデータセンターにバックアップデータを集約できる。それぞれの拠点にはバックアップのためのストレージを配置する必要がなく、管理に要するコストも抑えることができる。またストレージを集約すると、それぞれの拠点間で重複するデータも排除され、データ容量の削減効果が最大限に発揮される。

可用性を高める
従来型のテープバックアップには、無駄が多いと述べたが、一方で冗長性があるというメリットがある。つまり、テープの劣化や破損などにより、最新の状態にリストアできないことがあっても、1週間前の状態にはリストアできるかもしれないということだ。重複排除では、すべての冗長なデータは保持されないので、このような可用性の点で脆弱であると言える。
したがって、レプリケーションのような技術を使って二重化しておくことをお勧めする。重複を排除するのに冗長化するというのは、矛盾に聞こえるかもしれない。しかし、典型的な環境では、通常のバックアップにおいて99%以上が重複なのである。コストと可用性の両方において最適化されたソリューションが、重複排除して二重化、である。
浅野百絵果(あさの もえか)
株式会社シマンテック
プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングマネージャ
小規模~中規模向けバックアップを専門とする。「Symantec Backup Exec」、「Symantec Backup Exec System Recovery」を中心に、日本での製品ポジショニングの決定、市場に対するマーケティング活動などを行う。
編集:田中好伸
Twitterアカウント:@tanakayoshinobu
青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。