移行ツールのTuxedo Application Rehosting Workbenchは、アプリケーションやデータの変換を自動化するために、作業の工数を大幅に削減できるという。CICSのオンラインプログラムは、メインフレームで稼働するCOBOLのビジネスロジックをそのままオープンCOBOLに移行される。データアクセスロジックは「Oracle Database」や、ISAM(Indexed Sequential Access Method、IBMが開発したデータ格納方法)ファイル向けに自動変換される。
清水氏は、Tuxedo Application Rehosting Workbenchのメリットとして「エラー率が極めて低い」ことを挙げている。そのエラー率は「1万行、10万行に1個エラーがあるかどうか」と説明している。
またIBMのデータベースである「DB2」からのコンバータは、Oracle Database 11gに移行するためのデータスキーマを自動生成して、データの移行も行えるという。COBOLの“方言”やSQLの埋め込みといったものにも対処しながら、オープンCOBOLに変換できるとしている。
清水氏はTuxedo Application Runtimeは、同社のアプライアンス製品である「Oracle Exalogic Elastic Cloud」との連携機能が強化される予定であることを明らかにしている(ExalogicにはTuxedoが組み込まれている)。
※クリックすると拡大画像が見られます
オープン系移行で85%ものコスト削減
Tuxedoを活用して、メインフレームをオープン系システムにリホストすることでいかなるメリットを得られるか。清水氏は、その一例として仏の全国労働者健康保険金庫(Caisse Nationale d'Assurance Maladie des Travailleurs Salaries:CNAMTS)の事例を挙げている。
CNAMTSは5000万人が加入する社会保障制度であり、年間の支払額は1100億ユーロ、年間の保険請求処理件数は11億件にも上るという。そのシステムも当然巨大であり、ユーザー数は8万、同時接続数は3000人としている。そのシステムはIBMと仏Bull(1991年にメインフレーマーの米Honeywellを買収)のメインフレームを活用しており、1万2000MIPSもの処理性能があったという。システムにはCOBOLで3500本、JCLで4600本のプログラムが稼働しており、データ量は270Tバイトにもなるとしている。
※クリックすると拡大画像が見られます
CANMTSは、これをアプリケーションやデータを変換ツールで自動変換し、オープン系システムで実行するというリホストプロジェクトを展開した。リホスト後のシステムはIBMのUnixサーバ「pSeries」(現「Power Systems」)9台にAIXを載せ、Oracle DatabaseやTuxedoなどで環境を構築している。
清水氏の説明によれば、CNAMTSがIBMとBullに支払っていた年間保守費用はハードとソフトを合わせて概算で6500万ドル、リホスト後のハードとソフトの年間保守費用は1000万ドルになっているという。年間の削減費用は5500万ドルになる計算だ。もちろん、リホストプロジェクトには新規にハードやソフトを購入し、サービス費用やデータセンターの統合費用もかかっており、その投資総額は3700万ドルという。それらの収支を計算すると、移行後1年で投資を回収したことになる。
「CNAMTSのリホストプロジェクトはベンダーロックインというリスクを排除するとともに、85%ものコスト削減に成功している」(清水氏)
このプロジェクトでは、最新技術を採用することを狙っており、「コンポーネントベースの開発にシフトするとともに、COBOLの開発スキルの維持とJavaを利用した新しいシステム開発を両立することにも成功している」という。移行後のシステムではバッチ処理が「1日8時間に短縮できている」とも説明する。