「2011年の国内IT市場は、震災前のプラス成長予測から、前年比4.5%減のマイナス成長へ」--IDC Japanは4月18日、東日本大震災の影響を考慮した国内IT市場規模の予測修正を発表した。同社では、2011年の国内IT市場は、東日本大震災の影響を受けて、前年比4.5%減の12兆165億円と予測。2011年2月の震災前には、前年比0.6%増、12兆6172億円のプラス成長としていたが、一転してマイナス成長に予測を修正した。
IDCでは、ハードウェア市場、パッケージソフトウェア市場、ITサービス市場のいずれもが前年割れになるとみており、ハードウェアでは、前年比1.4%減の予想から5.7%減に、パッケージソフトウェア市場は2.9%増から7.9%減に、ITサービス市場では1.8%増から1.8%減に、それぞれ下方修正した。
ITサービス市場では、新規案件を取りやめる例が増加するとみているほか、金融業、製造業でもIT投資の抑制が増加すると分析。ITサービスへの投資は、老朽化対策やコンプライアンス対策に限定されるとしている。
また、ハードウェア市場およびパッケージソフトウェア市場に関しては、「ハードウェア市場は、PCやサーバが10%を超えるマイナス成長となるが、スマートフォンの成長が高く、これがハードウェアの落ち込み幅を支える。だが、パッケージソフト市場は、PCおよびサーバの出荷縮小の影響を受け、その上で利用されるパッケージソフトが落ち込む。ソフトウェア市場は、システム構築案件の延伸や企業の海外シフトによって、サーバ系ソフトも需要が減退するだろう」(IDC Japan、ITスペンディング/ITサービス/ソフトウェア&セキュリティ/コミュニケーションズグループディレクターの和田英穂氏)とした。
PCについては、震災前についても2けたのマイナス成長を予測していたが、その幅が拡大。サーバについては、震災前には1けたのマイナス成長の予測だったが、2けたのマイナス成長へと修正した。
これらの下方修正の結果を総合すると、震災の影響によって、国内IT市場全体で6000億円程度、市場規模が縮小することになる。
「2011年は景気の二番底を避けられない。政府、自治体、企業は復興を最優先にし、不要不急のIT支出を後回しにする。景気低迷が見込まれることから、企業心理や消費者心理が悪化し、設備投資や消費が減退。電力不足も心理悪化につながり、IT支出が抑制される。また、大震災によって、サプライチェーンが寸断され、生産の復旧に全力が注がれているが、一部の部品や素材の供給が滞る。スマートフォン(コンバージドモバイルデバイス)に影響が表れ、需要の減退だけでなく、供給制約によっても市場が抑制される」(和田氏)
IDC Japanでは、40種類以上の部品、60カ所以上の事業所を調査した結果、PC製造への影響はないとみている一方で、iPhoneやAndroid端末などのスマートフォンでは、高い成長を維持するものの、高精細パネルなどの供給不足によって、6月以降に登場する新製品の投入に、若干の影響が出るとみている。
2011年10月以降は、政府、自治体の復旧、復興が本格化。景気が回復軌道に乗り、サプライチェーンも復旧、リスク管理強化などの動きが加速することによって、IT支出が回復すると予測。2012年は、前年比3.5%増の12兆4327億円になるとした。
2012年以降は、復興需要や外需がけん引し、日本経済は改善するとみている。電力不足解消に向けて、スマートグリッド、エネルギー管理システムなどの導入が促進されることや、リーマンショック後の2010年には需要が急回復したように、2011年の反動によって、ハードウェアを中心にIT支出が回復すると予測した。
「PCやサーバなどの多くの製品がプラス成長するだろうが、電力不足対応、リスク回避の観点から、サーバ集約やパブリッククラウドサービスの利用が促進され、これがハードウェア市場拡大の抑制要因になる可能性もある」(和田氏)
さらに、中長期的には東日本の電力逼迫(ひっぱく)を解決する必要があると指摘。そのためにはスマートメーター、スマートグリッド、家庭向けエネルギー管理システム(HEMS)などの導入が促進される必要があり、「ITベンダーはクラウドの技術を生かし、スマートグリッドやエネルギー管理システムなどの早期実現、普及に積極的な役割を果たすことが期待される」とした。
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