「電力15%削減が経営に与える影響」を即答できますか--工場管理と基幹システムの連携が必要な理由

柴田克己 (編集部) 2011年05月02日 19時37分

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 東日本に工場などの生産拠点を持つ製造業者にとって、今夏の電力供給不足と、それに伴う節電対策は火急の課題のひとつだろう。海江田万里経産相は4月28日、東京電力および東北電力管内において、今夏の最大使用電力の削減目標を前年比15%減とすることを発表した。

 生産拠点である工場での消費電力を削減することは、その拠点の生産能力に直接影響を与える。ひいては、それに伴う経営へのインパクトも無視できない。ここで問題になるのは、「どのように電力を削減すれば、ビジネスへの影響を最小限に抑えられるか」「それに伴う経営へのインパクトはどれほどになるのか」を正確に把握することだ。実際に、数値的な根拠を持って、この問題に回答できる企業はどの程度あるだろうか。

 ビジネスコンサルティング、および業務・組み込みソフトウェアの開発を行うエイムネクストの代表取締役である清威人氏は「現状、明確な答えが出るケースはほとんどない」と語る。その原因は、工場管理、運営のシステムと、その企業の基幹システムとが、それぞれ別のものとして導入、運用されており、それらの高度な連携が考慮されているケースがきわめて少ないためだという。

 今回の震災に伴う電力不足が顕在化する以前から、この「工場マネジメント」の孤立は、生産のコストを下げつつ、品質を上げていくうえで問題とされていた。

 グローバル競争の激化に伴い、世界規模での生産体制の効率化が重要になってきているうえに、品質保証の要求は増大し、その管理項目は人手で可能な範囲を超えつつあるという。また、新興国での賃金が上昇する中で、従来のように安価で大量の働き手を確保する「人海戦術」が行き詰まりを見せ、設備投資、間接部門の削減といったトータルでの原価低減が求められるようになった。また、資源価格の上昇や環境負荷の軽減といった側面からは、資源の効率化も重要になってきているという。

 ここで必要になるのが、工場内に存在する多数のファクトリオートメーション(FA)機器の稼働状況や、センサから得られるデータを収集して「見える化」し、それらをERPなどの基幹システム、資産管理システムとリアルタイムに連携させることだ。

 清氏は、FA機器による工場内ネットワークは、規格のオープン化等が徐々に進んでおり、現在の技術で、様々な設備から基幹システムまでをネットワーク化することが可能になりつつあるとする。

 こうした、ビジネス環境の変化に対応しつつ、FA機器の技術的な進化によって可能になった新たな工場のマネジメントシステムのコンセプトとして、エイムネクストでは「スマート・ファクトリー」を掲げている。

 このコンセプトでは、工場内の設備、管理系機器、基幹システムをネットワーク化することで、さまざまな情報の見える化と、情報間の関係の明確化を目指している。

 工場内で発生する多様なデータを可視化するとともに、工場内システムと基幹システムとをリアルタイムに連携させて共有することで、製造現場と経営層の垣根をなくし、品質管理能力の向上、管理コストの削減、CO2削減、キャッシュフロー改善など、工場経営上のさまざまな課題を解決できるとする。

 このコンセプトのもとでネットワーク化して連携させるシステムは、基幹システム、MES(Manufacturing Execution System)やPLC、各種設備、検査装置、各種のセンサ(電力使用料、エア流量など)まで多岐に及ぶ。さまざまな管理ポイントからのデータの関係性(どの測定値がどのオーダーに該当するのか)までを含めて収集、蓄積することで、これらは各種の管理指標に変換されて、分析可能なデータとして「見える化」される。

 たとえば、最初に例として挙げた、電力消費量の削減による、生産量、業績へのインパクトを高い精度で予測することはもちろん、品質管理の側面では、リアルタイムにデータを把握することにより、ある工程での不良発生率を事前に予測することも可能になるという。

 清氏は、このスマート・ファクトリー実現のメリットとして、「工場全体でのスループットの増大」「品質管理能力の向上」「キャッシュフローの改善」「間接コストの削減」「生産性の改善」「生産リードタイムの削減」といったことを挙げる。もちろん、その実現にあたっては、システムのネットワーク化といった技術的な側面だけではなく、業務、人、組織の面での改革も必要になる。同社では、コンサルタントやエンジニアが経営の視点からソリューションの立案を行い、スマート・ファクトリーの実現をサポートしているという。

 また、同社では、ここで実現されるリードタイム短縮の効果を会計的に説明するための指標として「J-COST」と呼ばれる指標を採用している。これにより、リードタイム短縮改善が経営指標に与える効果を、原価低減と同じ次元で表現することを可能にしているという。

 エイムネクストでは、中国やベトナムにも拠点を持ち、7カ国の従業員を抱えるため、海外に拠点を持つ製造業者のグローバル展開を支援しやすいという。また、3月下旬には日本インフォア・グローバル・ソリューションズ(インフォア)との協業のもとで、同社の「Infor ERP LN」(旧Baan)と、工場内の設備や周辺システムを連携させ、スマート・ファクトリーのコンセプトをデモンストレーションするショールーム「エイムネクスト スマート・ファクトリー デモセンター」を東京の新橋に開設した。

 ここでは、このコンセプトに基づいたリアルタイムでの品質管理、エネルギー(電力、エア)消費量の収集、分析、省資源での計画立案、工場のキャッシュフロー管理の実演を見ることができる。将来的には設備資産管理である「Infor EAM」についても連携を図り、デモに組み込む予定という。また、今回の協業に基づいて、スマート・ファクトリーに基づいたERP、EAMの構築や連携をインフォアがバックアップする体制も整えているという。

エイムネクスト スマート・ファクトリー デモセンター 「エイムネクスト スマート・ファクトリー デモセンター」では、工場内の設備とERPなどとの連携を実際に見ることができる。

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