エンタープライズIT「アーキテクチャ」の真髄(中編)
(編集部より:企業としてどのようなITを目指すべきか、その姿がまとまったところで、“部長”は「ITとは何か?」という問いを出します。この議論はどこに行こうとしているのか…。前編はこちら)
コンサルタントの逆襲
「まだ、何か質問はあるんですか?」
「実は、いろいろある。ふふふ…」
「うぅん……全部、意地悪な上に重たすぎるんで…。こっちから、質問していいですか?」
「まだ、何も答えてないじゃないか」
「まぁまぁ。部長にとって、テレビって何ですかね?」
「えっ、テレビ? う~ん。黒い箱?」
「うぷっ! “くろいハコ”ですか。な~んすか、それ! まだ、地デジ対応していないんですか? ハコなんて、子供でも言いませんよ!」
「いや、当然、もう薄型テレビ買ったよ。ま、エコポイントだけどね。そういう君にとっては、何だよ、テレビって?」
「僕の場合、娘や家内とのコミュニケーションツールですかね。娘がテレビ好きで、家族皆が見ますよ、『名探偵コナン』とかね。家内がバラエティやドラマが好きなので、僕が気に入ったものは一緒に見ます。一緒に見てると、会話のネタができたりするんですよね。ま、僕は、テレビは『ディスカバリーチャンネル』とかのドキュメンタリーかスポーツが中心なんですけど。皆が一緒に見れる番組があると家族のコミュニケーションが進む。テレビがリビングにあってくれて、本当にいいと思っています」
「ま、そういうものかもね」
「またウチの会社に、この前新居に引っ越した奴がいます。彼、それにあわせて、Apple TVを買い、iMacを買ってテレビと繋いだんですって。それで、もともとネット大好き人間だった彼は、テレビでYouTubeとか見まくっているそうです。彼にとっては、テレビはネットの世界を見るためのディスプレイなんでしょうね」
「何か、煙に巻こうとしてるな?」
「いえいえ、滅相もない。どうしてこういうことを言うかというと、“ITとは何か?”というのは、この“テレビとは?”という質問への答えと同じようなことを示しているような気がしています」
「うん?」
「部長の会社にとって、ERP(統合基幹業務システム)って何ですかね?」
「伝票発行マシン……かな」
「流石。でもね。海外企業ではERPって“Operational Data Store”って呼称するときも結構あるんですよ。伝票を発行することが目的となっているネーミングではなく、Dataにその主眼が置かれている呼称。ちなみにData Storeって言うくらいですから、その“お店”にデータを買いに来る人、誰だと思います?」
「そのときのStoreってお店って意味なの? ま、百歩譲ってそうだとして、そのお店にデータを買いに来る客は普通、経営者だろうね」
「その通り。海外企業の場合には、ERPというものは、経営者の業績把握マシンなんですね。言い方を借りれば、会社の内外で何が起きているかを把握するマシン。僕、たまに申し上げるんですけど、海外企業にとってERPというものは、大統領の“補佐官”みたいなもんだと申し上げています。いろいろなものをレポートしてくれて、判断を助けてくれますよね。一方、部長の会社では“伝票帳”と“エンピツ”、あとは“電卓”ですかね」
「ひどい言い方するねぇ…。ま、その域からは出てないけどなぁ…」
「これはグループウェアなども同じことで、日本では電子書庫の域を出ていないと思います。海外企業では、これを情報ソースにして媒体として再編集して伝えるメディアになっている」
「んんん……」