必要なのはITの“構想力”

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-05-19 08:00

エンタープライズIT「アーキテクチャ」の真髄(中編)

編集部より:企業としてどのようなITを目指すべきか、その姿がまとまったところで、“部長”は「ITとは何か?」という問いを出します。この議論はどこに行こうとしているのか…。前編はこちら

コンサルタントの逆襲

「まだ、何か質問はあるんですか?」

「実は、いろいろある。ふふふ…」

「うぅん……全部、意地悪な上に重たすぎるんで…。こっちから、質問していいですか?」

「まだ、何も答えてないじゃないか」

「まぁまぁ。部長にとって、テレビって何ですかね?」

「えっ、テレビ? う~ん。黒い箱?」

「うぷっ! “くろいハコ”ですか。な~んすか、それ! まだ、地デジ対応していないんですか? ハコなんて、子供でも言いませんよ!」

「いや、当然、もう薄型テレビ買ったよ。ま、エコポイントだけどね。そういう君にとっては、何だよ、テレビって?」

「僕の場合、娘や家内とのコミュニケーションツールですかね。娘がテレビ好きで、家族皆が見ますよ、『名探偵コナン』とかね。家内がバラエティやドラマが好きなので、僕が気に入ったものは一緒に見ます。一緒に見てると、会話のネタができたりするんですよね。ま、僕は、テレビは『ディスカバリーチャンネル』とかのドキュメンタリーかスポーツが中心なんですけど。皆が一緒に見れる番組があると家族のコミュニケーションが進む。テレビがリビングにあってくれて、本当にいいと思っています」

「ま、そういうものかもね」

「またウチの会社に、この前新居に引っ越した奴がいます。彼、それにあわせて、Apple TVを買い、iMacを買ってテレビと繋いだんですって。それで、もともとネット大好き人間だった彼は、テレビでYouTubeとか見まくっているそうです。彼にとっては、テレビはネットの世界を見るためのディスプレイなんでしょうね」

「何か、煙に巻こうとしてるな?」

「いえいえ、滅相もない。どうしてこういうことを言うかというと、“ITとは何か?”というのは、この“テレビとは?”という質問への答えと同じようなことを示しているような気がしています」

「うん?」

「部長の会社にとって、ERP(統合基幹業務システム)って何ですかね?」

「伝票発行マシン……かな」

「流石。でもね。海外企業ではERPって“Operational Data Store”って呼称するときも結構あるんですよ。伝票を発行することが目的となっているネーミングではなく、Dataにその主眼が置かれている呼称。ちなみにData Storeって言うくらいですから、その“お店”にデータを買いに来る人、誰だと思います?」

「そのときのStoreってお店って意味なの? ま、百歩譲ってそうだとして、そのお店にデータを買いに来る客は普通、経営者だろうね」

「その通り。海外企業の場合には、ERPというものは、経営者の業績把握マシンなんですね。言い方を借りれば、会社の内外で何が起きているかを把握するマシン。僕、たまに申し上げるんですけど、海外企業にとってERPというものは、大統領の“補佐官”みたいなもんだと申し上げています。いろいろなものをレポートしてくれて、判断を助けてくれますよね。一方、部長の会社では“伝票帳”と“エンピツ”、あとは“電卓”ですかね」

「ひどい言い方するねぇ…。ま、その域からは出てないけどなぁ…」

「これはグループウェアなども同じことで、日本では電子書庫の域を出ていないと思います。海外企業では、これを情報ソースにして媒体として再編集して伝えるメディアになっている」

「んんん……」

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  2. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  3. 運用管理

    IT管理者ほど見落としがちな「Chrome」設定--ニーズに沿った更新制御も可能に

  4. セキュリティ

    シャドーITも見逃さない!複雑化する企業資産をさまざまな脅威から守る新たなアプローチ「EASM」とは

  5. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]