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情報は第4の経営資源 - (page 4)

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-05-26 08:00

 この選択と集中は、ITの中でも進めるべきであり、自分たちの企業が「何を重要視しているか」で決まってくる。この位置付けを明確にしていくべきだ。

 自分たちの必要なITの構成のメリハリが付き、ラインアップが決まってくれば、あとはそのITをどういう“工法”で作っていくかを問う必要がある。一般的には「アーキテクチャ」と言われる言葉がこれに当たるが、個人的にアーキテクチャという言葉は日本人にはなじみがないので、“工法”という言葉を使うようにしている。

 このとき、考えなければならないのは「どれくらいモダンな作り方をするか」である。新しければ新しいほどいいかというと、決してそういう訳でもない。ITのサービスは、徐々に品質が向上していく業態であるから、新しい工法はどうしても品質が低くなることが懸念される。一方、技術の変化の早いこの業界において、古い技術は寿命を早く迎える宿命を背負っている。

 いずれにしてもどこかのタイミングで建て替えが発生してくる。以前、「ITの進化はカイゼンではなく、リストラクチャリングによってもたらされる」と申し上げたのは、このサイクルがやってくることを指している。この建て替えを上手に行っていくことが、IT部門を司る上層部の最も重要な意思決定とも言えるだろう。

距離感と変化量の問題

 この決定は複雑な決定なので、次回以降の投資と人材の議論と合わせて、包括的に議論したいのだが、今回は、2つの原則について言及しておきたい。それは、工法選択の条件の問題である。

 1つめは、経営資源としてのITを継続的に育み、発展させることである。そう考えると、本当に重要な経営資源は“インフォメーション”であり、それを作るハードウェアやソフトウェアではないことに気付くであろう。成長させなければならないものは何か。それはデータであり、さまざまな文書情報である。

 成長させるためには、データや各種文書情報を永続的に管理し、活用できる状態に設計することが必要であり、そして、企業全体で情報を活用できるようにすることは必須である。それをやろうとすれば、ハードウェアやソフトウェアの制約でデータや情報が使えない状態はあってはならないこととなる。

 現代の技術では、これらのことが既に可能となっている。それは、極めて真っ当な技術の進化であるため、この技術を用いて、第4の経営資源であるインフォメーションを保全し、インフォメーションの育成に努める技術選択を行っていかなければならない。

 2つめは、標準化、共通化していく技術の採用である。ITとは、高速で大量処理が向いているという特性上、標準的な処理を進めたり、共通的な処理を進めることが、その本来の性質に向いている技術である。極力、多くの局面で標準的なものを使い、共通的なものに集約することは、当たり前の進化であり、重要な経営資源としてのインフォメーションを持続的に維持・管理しやすくなる。すなわち、現代においては、SOAや仮想化などの技術は、どんどん活用していくべきで、その必要性は論をまたない。

 ただし、それを一気呵成に実現していくことは、現実感を持った対応とは言い難いことも一方で事実となる。そこには、投資の制約があり、対応する人材の制約があるからだ。

 多くの企業では、維持・管理に汲々としており、新しい技術革新をもたらすことに投資が回らない状態になっている。一方で長年、古い技術を担当してきたがために、新しい技術に対応しようとすると、技術習得の壁が生じていることも事実である。

 筆者は、この問題は、距離感と変化量の問題として捉えるべきだと考えている。進化は進んでいくが、そのベクトルをどこまで進化させることとするのか。変化はさせなければならないが、その変化の量をどれくらいの期間で、どこまで変化させていくのか。

 ここを自社の投資の状況や人材の状況に応じてコントロールすることが、ITを永続的に役立つ経営資源とするためには、重要な選択になると言える。

 自社のヒトとカネに応じて、ITというモノの進化を、どれくらいの距離感でどれくらいの量、変化させるか。この問題を、次回の部長との議論のテーマとしたい。

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宮本認(みやもとみとむ)

ガートナー ジャパン株式会社

コンサルティング部門マネージング・パートナー

大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。

編集:田中好伸

Twitterアカウント:@tanakayoshinobu

青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。

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