IDC Japanは5月23日、国内中堅中小企業(従業員規模999人以下)IT市場の2011年~2015年の市場予測を発表した。これによると、2011年の国内中堅中小企業IT市場規模は、東日本大震災の影響によって3兆3810億円、前年比マイナス8.6%と大幅に減速すると予測している。
3月11日に発生した東日本大震災においては、東北地方を中心に広い範囲で地震、津波による甚大な被害を受けた。既に一部で復興活動が開始されているものの、経営体力に乏しい中堅中小企業では建物、設備の損壊などによって企業活動の再開が遅れている。
また、その他の地域においても東北地方の生産拠点の回復の遅れによるサプライチェーンの寸断、東京電力、東北電力管内の電力不足、消費者の「自粛」による消費マインドの低下によって多くの中堅中小企業で業績が悪化しているため、IT支出は抑制傾向となっている。これにより、2011年の国内中堅中小企業IT市場は大幅なマイナス成長になると予測されるという。
しかし、2012年は、サプライチェーンの回復、復興需要の拡大によって中堅中小企業においても業績が回復する企業が増加することから、同市場もプラス成長に回復するとみている。
産業分野別では、2011年は東日本大震災の影響によりすべての産業分野でマイナス成長を予測。特に製造(前年比成長率マイナス11.4%)、金融(同マイナス10.7%)では2桁のマイナス成長が予測されている。その一方で、情報サービス(同マイナス5.9%)では、震災の影響を若干受けるものの、データセンター需要が拡大しているほか、インターネットサービス事業者においては消費者の「自粛」による消費マインドの低迷の影響が比較的小さく、堅調に業績を伸ばす企業が多いことから、マイナス幅は比較的小幅にとどまるとIDCではみている。なお2012年には、金融を除いた各産業分野でプラス成長に回復するとしている。
2011年の国内中堅中小企業IT市場は大幅に減速するが、その一方で震災を契機として「事業継続性/災害対策」または「節電対応」を目的に中堅中小企業でもデータセンター、クラウドコンピューティングの需要が拡大しているという。しかし一方で、今後、電力不足が改善に向かうなどの要因で、これらのソリューションが一過性の需要にとどまる可能性もあるという。IDC Japan、ITスペンディング マーケットアナリストの市村仁氏は「ITベンダーは『事業継続性/災害対策』『節電対応』などのニーズに迅速に対応するだけではなく、業務の経営課題も含めたソリューションとして提案するべきである」とコメントしている。
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