ソフトウェア業界の巨人、独SAPを建て直すという使命の下、Jim Hagemann Snabe氏とBill McDermott氏が共同CEOに就任したのは2010年2月のことだった。
就任後、5月には米Sybaseの買収を表明。米国で開催した「SAPPHIRE Now 2010」では、オンプレミス、オンデマンド、オンデバイスという3つの戦略を打ち出した(関連記事:SAPが目指す「オンプレミス、オンデマンド、オンデバイス」)。
あれから1年、Snabe氏はSAPの将来と成長に大きな自信を持っている。
Snabe氏は米オーランドで開催された「SAPPHIRE Now 2011」で、エンタープライズに新しいイノベーションをもたらすことを約束した。SAPPHIREの会場で、Snabe氏に話を聞いた。
--コンシューマーが力を持つという点を強調されました。この領域にどう取り組んでいるのか?
2つあります。まずは「B to B」。顧客企業がクライアント、つまり営業面などで生産性を高められるインフラの提供です。現場の営業スタッフはタブレットなどの端末を使うことで、顧客によりよいサービスを提供できます。
次に「B to B to C」として、コンシューマー向けのソフトウェア提供を支援します。電力会社がコンシューマー向けに電力管理サービスのiPhoneアプリを提供するような例です。
--インターネットの普及が新しい経済への移行を進めている。SAPの業務ソフトはどう変わるか?
今年のSAPPHIREでは、“人中心のアプリケーション”(People Centric Application)として「Sales OnDemand」を披露しました。コンシューマーでもエンタープライズでも“個人”が力を持つようになっていますが、企業の場合は個人が集まって目的を探し、それに向かって緩やかに群れをなして動くイメージです。そのためには構造が必要で、SAPはこれを提供します。
中央集権型から分散型に移行していることは明らかで、ITもそれに合わせて変化しています。メインフレームからクライアント/サーバへと変化し、今後はモバイルにより分散化がさらに進むと考えています。
SAPはここで、中央のインフラと分散インフラとの間の接続を提供し、フレームワークの中で人々を支援できる環境を実現していきます。
これまでのSAPは、ビジネスプロセスや構造化されたロジックをサポートするアプリケーションを設計してきました。これは重要で、今後も続けていきます。それと同時に、人に最適なツールを提供する必要性も感じているのです。これを“人中心のアプリケーション”と呼んでいます。
われわれの仕事の多くはコラボレーションです。営業担当であっても、マネージャーや社員などと、さまざまな顔を持ちます。ある意味で、ビジネス環境に合わせたFacebookのようなアプローチと言えます。
Sales OnDemandは限定的なロールアウトの段階で、その後、一般提供を開始します。次に、人中心のアプリケーションではキャリアマネジメントを計画しています。これまでは「人材管理」などと言われたカテゴリですが、中心を人、社員にして「キャリア管理」としました。