ブリッジインターナショナルの尾花淳氏は、データ喪失や計画停電が実際に起きたため、危機感が共有できている間はクラウドなどのソリューションの啓発活動は有効と述べる。最低限、役員が持つ重要なデータだけでも冗長化するなど、段階的に展開していく方法を提案している。
ロジストの山之内謙太郎氏は、企業は利益を上げるためにITに取り組んでおり、ベンダーも利益につながるものを提案していたとする。しかし、「会社が(震災で急に)なくなるとは考えていなかった」と話し、危機感をあおったソリューションだけを訴求してはならず、またBCPやDRを一過性のものにしない提案が必要との認識を示す。
ネットコマースの斉藤昌義氏は、震災によってすべての価値観が変わることは根本的にないと指摘。製造業の海外シフトは震災前からあり、流れは基本的に変わらないという認識だ。ただ、優先順位、投資配分、そしてスピードの変化は「圧倒的に大きい」と話す。
クラウドを逃げ口にするな
震災によるITビジネスへの影響が一過性のもので終わるのか、中期的にも影響するのかという点に対して、ノークリサーチの伊嶋謙二氏は、ZDNet Japanの調査結果を引きながら、中期的な影響でクラウドに対する声が多かったことに触れ、「何も変わっていない。(クラウドだけでは)もう少し長い目で見たときに、意味がないもので終わってしまう可能性がある」と危惧する。震災を機に「クラウド」がバズワードに逆戻りしてしまい、結局何も変化しないまま事態が進むという、ある種の逃げ口になってしまう危険性を訴えているのだ。
社員の安否確認にも使えるソーシャルな仕組みが加速すると見るのは藤村氏。ただし、「ここ1〜2年のビジョンを急いで用意しなければいけない」とも強調している。
丸新システムズの熊倉義幸氏によれば、新潟県内では上場企業こそクラウドを本格的に検討しているとしつつ、「そこまでいっていないSMBが9割方」という状況。営業側も「専門性を高める必要がある」と指摘する。各企業の事情を理解した上で、画一的ではなくそれぞれに適した形で提案しなければならないと訴える。熊倉氏は、ここ1〜2年はインフラ需要が強まると見ており、最初はサーバを仮想化した上で、いずれはクラウドに移行するという見方を示している。
会場からは、「クラウドをオンプレミスの反対と思った時点で、そういった提案しかできない」という指摘があり、「クラウドはプラットフォーム化であり、顧客を集めてシナジーを高めてふくらませていくものだ」などと議論が展開された。
伊嶋氏からは、情報システム部門を持たず、ITをベンダーや販売店に頼るしかないSMB層に対して、IT企業の営業はどう取り組むのかという問題提起があった。来場者からは、各企業の個別の要求に応えるのではなく、インフラを含めてパッケージングし、投資を抑えつつ効果を得られるという提案をしており、逆に大手では情報システム部門があるので個別サービスを提案しているとの回答があった。
(次回は6月9日の掲載予定です)
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