「クラウドファンディング」と僕たちの生きる社会

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2011年06月07日 08時00分

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 「クラウドファンディング」のビジネスが徐々に立ち上がってきた。先週は「CAMPFIRE」というサービスが立ち上がった(CNET Japan)。同じタイプのサービスとしては「Ready For?」に続いて2社目となる。

 任意のプロジェクトに対する資金を、ネットを通じて集め、実現する、というクラウドファンディングの仕組み。これを単にネットが可能とするビジネスモデルの一つとして片付けるのはちょっともったいない。

クラウドファンディングのビジネスモデル

 クラウドファンディングは、多数の支援者が任意のプロジェクトや事業に対して資金提供を行うものである。ただし、AQUSHmaneoのように金利を伴う金銭貸借を行うソーシャルレンディングとは異なる。つまり、資金を調達する側が金利を支払う訳ではない。

 R25によれば、クラウドファンディングには3つの類型があるそうで、それぞれリターンをどのように得るのかによって区分されている。一つ目は「寄付型」と呼ばれるリターンを一切求めないタイプ、二つ目は「購入型」と呼ばれる金銭以外のリターン(例えばイベントへの招待など)を得るタイプ、そして三つ目は「投資型」と呼ばれる金銭的リターンを想定するタイプ。

 先のCAMPFIREは「購入型」で、映画製作やアートイベントなどのプロジェクトへのファンディングを募る。クラウドファンディングの収益モデルは、その仲介を行うサイトの運営者が仲介の手数料を受領するというものである。

 ビジネスモデルという観点では、ネットを通じてPtoPを支援して手数料を受領するタイプの一つと片付けることも出来る。しかし、そこで取り扱われる商材が、映画製作であったりアートイベントであったりと、非常に個人の嗜好性が強く反映されるものである点、単なるビジネスモデルの議論で片付けるのは拙速であろう。

クラウドファンディング社会との関わり

 佐々木俊尚氏は『キュレーションの時代――「つながり」の情報革命が始まる』の中で、マスメディアのもとで実現した記号消費の時代は終わり、消費者は、細分化された情報共有の圏域の中で「共鳴できる」「共感できる」ものを求めているという。

 つまり、社会一律での豊かさのイメージや目指すべき規範というものはもはやなく、ネットを通じたつながりによって細分化された無数の情報圏域が出来つつある。その中では、消費はその接続と承認のために行われる。

 すると、クラウドファンディングを通じた資金の提供というものも、自分が共鳴・共感する情報圏域への接続と承認のために行われるものとも解釈できる。つまり、自分の応援したい作家やプロジェクトへ資金を投じる(=消費する)ことによって、共鳴と共感の確認をする訳である。そのためには、何らかの権威によって認められた作家であったりプロジェクトではなく、もっと細分化されて共鳴と共感によってのみ繋がるものでなくてはならない。

 こうした目的のためには、クラウドファンディングの中でも、全くリターンの無い「寄付型」や金銭的なリターンを求める「投資型」ではなく、繋がりの確認が得られる「購入型」というのが最も適しているのだろう。クラウドファンディングとは、新しいビジネスモデルとして捉えることが出来る一方で、その在り様というのは僕たちの生きる社会の在り様をも反映しているのではないだろうか。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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