“日本市場に適した”アジャイル開発の契約モデル案
アジャイル開発で実際に行われてきた契約の事例を見てきましたが、結論としては、これまでの主流だった一括請負契約も、(完全な)準委任契約も、日本市場でアジャイル開発を普及させるには適していないように思われます。
そこでIPAは、ここに2つのアジャイル開発に向けた契約モデルを提案します。
1.基本契約・個別契約モデル
1つの基本契約と複数の個別契約(請負か準委任)を結ぶモデルです。プロジェクト全体に共通する事項を定めた基本契約を締結した上で、機能が確定した部分から1~3カ月間程度の個別契約を結びます(多段階契約)。個別契約ではプロジェクトのフェーズや状況に応じて、一括請負契約か準委任契約かを柔軟に使い分けるようにします。
プロジェクトの初期フェーズにおける個別契約は準委任にしておき、双方のコミュニケーションや信頼関係が深まった段階で請負に切り替える、という運用も考えられます。
2.組合モデル
システム開発プロジェクトにおいて、顧客企業が費用を、開発側(複数社も可)は開発要員を出し、プロジェクトを推進していくための組織を形成して開発を行っていくモデルです。スキームとして民法上の組合を用いているためこう呼びます。土木業界におけるJV(ジョイントベンチャー)と似ています。
特徴はアジャイル開発に要求される顧客(ユーザー)と開発側(ベンダー)の緊密な協力関係をそのままJV(組合)という形で契約に反映させているところです。このモデルでは、プロジェクトのコーディネートとプロジェクトマネジメントを組合が担当し、実際の開発は組合が開発側に委託して行うということを想定しています。
以下、それぞれのモデルの契約案をより詳しく見ていくことにします。