基本契約・個別契約モデルの契約案
・契約で想定している内容
この契約スタイルでは、顧客によってプロジェクト全体についての企画が終了しており、プロジェクトの全体概要およびその中で開発する機能について、顧客がある程度のイメージをもっていることが前提となっています。
顧客はチームの一員としてプロジェクトに参画してタイムリーな意思決定を行うこと、開発側は顧客のビジネスを理解することがそれぞれ求められます。そして双方ともに、開発中のスコープの変更を許容し、1つのゴールに向かっていく意識を共有することが重要です。
この契約は基本契約と個別契約に分かれています。基本契約では、プロジェクトの概要、顧客と開発側の間で設置する意思決定機関である連絡協議会、合意事項に変更が生じたときの変更管理手続きなど、プロジェクト全体にかかわる事項を規定します。一方、個別契約では、具体的な作業内容を法的拘束力のある形で定めています。また、一括請負、準委任契約のいずれにも対応できるものとしています。
・アジャイル開発プロセスモデルとの関係
最初に、プロジェクト全体について基本契約を締結した後、随時個別契約を締結します。基本的には、リリース単位で個別契約を締結します。
・契約の概要
一部繰り返しになりますが、以下、契約の概要をあらためて示しておきます。
- 基本契約と個別契約を結ぶ。個別契約は、プロジェクトのフェーズや状況に応じて、一括請負、準委任契約を使い分ける
- プロジェクト全体に共通する基本事項を定めた基本契約を締結した上で、機能開発の内容が確定したものから順次個別契約をむすぶ
- 基本契約では、プロジェクト全体における顧客と開発側の協力体制を強調し、両者のポジションを明確にする
- 基本契約において、顧客と開発者が協力してプロジェクトを進行することを明記し、単なる受注者、発注者の関係ではなく、お互いに協力すべき立場であることを明記する
- 請負契約における開発側の完成義務と顧客の協力義務、準委任契約における開発側の義務および顧客の責任を明確にしておく
・連絡協議会
基本契約で規定される連絡協議会は、顧客と開発側の双方からメンバーが参加します。開発側は協議会ごとに議事録を必ず作成し履歴を残しておくこと、顧客はその議事録を了承した証として記名、押印する必要があります。連絡協議会で合意した事項は顧客、開発側ともに必ず従わなければなりません。議事録はそのための重要な証明となります。
顧客の意思決定の迅速化を目的に、もし顧客が議事録を承認しない場合は、“みなし承認”を原則として、「議事録を顧客が受領した日から○○日以内に点検を行う」という“みなし期日”を定めておくようにします。
・検収基準
顧客は出来上がった成果物をできるだけ速やかに検査/検収する必要があります。しかし顧客が具体的な理由を明示せず検収書を交付しない場合、“みなし検収”で合格したものとすることができます。
・契約案
基本契約案、一括請負契約の個別契約案、準委任契約の個別契約案をそれぞれ別ファイルにまとめましたので、必要に応じて参照してください。
- 基本/個別契約モデルの基本契約書案(リンク先はWord文書)
- 基本/個別契約モデルの個別契約書案(請負型)(リンク先はWord文書)
- 基本/個別契約モデルの個別契約書案(準委任型)(リンク先はWord文書)
本契約モデルでは、次のような特徴があります。
- 従来から使われている一括請負契約や準委任契約をベースにしているので、受け入れやすい
- 前述の短期の契約で繰り返す一括請負契約や準委任契約とは、次のような違いがあります
- 短期間で個別契約を繰り返す必要があるため、個別契約書は毎回同じものを使用し、別紙で個々の個別契約の詳細を規定することで契約事務手続の効率化ができるようにしています。別紙では、どういう機能を作るか、その成果物は何か、その作業期間はいつからいつまでか、いくらで開発するか、などをできるだけ詳細に規定するようにします
- 顧客と開発側の役割と義務を明確に説明しています。従来の契約書では顧客の役割と義務が書かれていないことが多いのですが、本契約書案では顧客の役割と開発者の作業が円滑にいくように協力する義務を明記しました
- 顧客の迅速な作業を促す、議事録のみなし承認と納品物のみなし検収を採用しています
- プロジェクトのフェーズや状況に応じて、個別契約に一括請負契約、準委任契約のどちらでも選べます。繰り返しの説明ですが、プロジェクト初期の仕様の確定が難しい場合や、相手のスキルに不安がある場合は、準委任契約が良いでしょう。プロジェクトが進んで仕様が固まって相手のスキルが分かってきた場合は、一括請負契約が良いでしょう