Service化が求めるIT部門の存在の大きな転換(起の部)
ITコンサルタントはやたらと3文字略語を使う。正確に数えたことがないので確かなことは言えないが、自分の記憶をちょっと手繰るだけで、優に500くらいは使っているような気がする。
最近、この3文字略語に対する潮目が変わってきているような気がする。昔は「BPRって何ですか?」といった質問を山ほど浴びせられ、その説明がきちんとされていないと「ここは日本だ。だからコンサルタントはダメなんだ!」とお客様から罵声を浴びせられた。しかし、近頃はそういったことがほとんどなくなってきた。単に我々が自由に使えるようになっただけでなく、お客様の方でも自由自在に3文字略語を使いこなされるようになってきている。
この前、ガートナーが提案を行った案件の話だが、お客様からの提案依頼文書(RFP)のタイトルが「SOA開発のPMOのRFP」であった。おそらく、普通の人が見れば、なんのことやらさっぱりわからないだろう。しかし、我々にはすっきりと話が通る。こういった言葉がお客様側から出てくることに、罵声を浴びた時代を知っている身からすると、感慨深いものがある。
しかし、告白すると、筆者は3文字略語には長年悩みを抱えている。それは「英語ネイティブの人は、3文字略語の意味がすぐわかるんだろうなぁ」という嫉妬であり、「本当に自分は3文字略語の意味を正確に理解しているのかな?」という不安だ。
手強い「BPR」と「SOA」
たとえば「BPR」だ。「Business Process Reengineering」という3文字略語である。「業務プロセス改革」などと訳されることが多いが、そのままの訳というわけではなさそうだ。
Businessは通常、「事業」と訳すことが自然だ。プロセスはそのまま日本語表記しているだけなのでいいとしても、Reengineeringは「改革」の意味ではない。engineerとは「工事」「工作」などの意味なので、Reengineeringは「作り直し」と外国人はすぐに理解するだろう。
「改革」と言われると、何かすごい大義のためにやらなければならない気がするのだが、「作り直し」と言われると「あ、もう古くなっちゃったからね」くらいの軽さがある。そう考えると、我々は少し仰々しすぎるかもしれない。こういった言葉のニュアンスの違いが、欧米と日本にはあり、取り組み一つを進める際に、実は大きな違いになっているのではないかと、不安に感じてしまうことがある。
BPRは本当に理解しているのかよくわからなくなる、手強い言葉の代表例だ。そして、最近の手強い言葉は「SOA」だ。読者のみなさんは「Service Oriented Architecture」とすぐに答えるだろうが、「Service」という言葉、どこまでピンと来ているだろうか?
(編集部より:ここからはITコンサルタントである筆者の宮本認さんと情報システム部長との会話です。すべてフィクションですが、実際のコンサルティング現場で行われている会話にかなり近いものです)
「Service」と「サービス」
「やぁ、宮本君。段々暑くなってきたね。今日は冷たいものでいいかな?」
「じゃ、お願いします」
「今日は“おいしい”じゃなくていいの? ま、いいか。もしもし、アイスコーヒー2つお願いします。名前は情報システム部のAです。社員番号は○○○○です」
「部長、最近、手強い言葉があるんですよ」
「え、何?」
「SOAです」
「そんなこと言ってていいの? ガートナーのコンサルタントのくせに?」