なぜIT部門の“工場化”が求められるのか?

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-07-14 11:40

Service化が求めるIT部門の存在の大きな転換(結の部)

編集部より:ITコンサルタントである筆者の宮本認さんと情報システム部長との会話です。これまではSOAの“Service化”によってIT部門が提供するものが変わり、それによってIT部門そのものも変わらざるを得ないこと、さらにはIT投資にも大きな影響があることを話してきました。しかし、ITコンサルタントは突如として部長にさらなるリストラクチャリングを求めてきました。その真意とは…。あわせてもどうぞ

徹底的なリストラで財務的余裕を

「えぇ~。ここから、コストまだ下げろって言うの?」

「そうです。下げましょう」

「どうして? まだ、縮小しろって言うの? もう、鼻血も出ないよ」

「うぅん……やっぱり、モダンなITへの転換、IT組織への転換を成し遂げるのは、それなりに投資が必要なんです。こう言っちゃなんなんですが、新しいITとIT組織を作っていくことが必要なんですね。そのためには、やっぱり投資が必要です。しかも前倒しの投資が」

「え~」

「でも、経営は新しい投資をITに回すくらいなら、M&Aをやったり、研究開発に投資を費やしたりしたいと思うんです。こういう時ですから。そうなると、自前で投資を生み出していくしかない」

「うん。そうだね。そうなると、もっとコスト下げろと」

「えぇ。やっぱり、そこからのような気がしています。IT部門はいま、企業に例えると倒産しかかっている状態なのではないでしょうか。顧客であるユーザー部門からの支持は失いつつあり、株主である経営者からは不信感を持たれている。成長戦略を描けず、長期的には衰退していくしかない。そういった場合、徹底的なリストラをして財務的な余裕を持つことが、改革のセオリーなんですよ」

「うぅん……また、出来そうもないことを」

キャッシュとリソースの余裕を生み出す

「いいや、できるんです。部長のところ、この前、ベンチマークで“結構安い”と出たじゃないですか。それを“世界最安”まで持って行くんです。別に世界最安じゃなくてもいいですけど」

「最安かぁ~」

「えぇ。できるところまで、コスト削減に取り組む。その上で、初めて未来に向けた投資が可能となります。逆に、そこまでコストが下がっていると、成長投資も非常に効率的・効果的になります」

「『まずリストラ』かぁ~。できるかできないか。仮にできたとしても、そこから成長戦略に移行することができるか。それは“IT戦略”の書き方次第ってことか…」

「まさにその通り。まずはギリギリのところまでリストラクチャリング。これは、単に一つ一つのコストを下げるというだけじゃない。自分たちの仕事で良くないものを、徹底的に自分たちのものじゃなくするってことも含みます。当然、単純に外出しするわけではなく、きちんとした形で。そのうえで、キャッシュとリソースの余裕を生み出し、成長戦略に転換する絵を描く。当たり前に進めるやり方ですよね」

「奇策はないの?」

「あるかもしれませんし、ないかもしれません。でも、筋で言えば、王道の取り組みが一番成功しやすいですね」

「うぅん。そうか…」

「じゃ、今日はこの辺までですかね」

「うぅん…。今日はいろいろショックだったからね…。次回はリストラと成長戦略の立て方って話でどう?」

「承知しました。じゃ、次回また」

「うん。ありがとう」

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