そうなると、従来にも増してBusiness Processへの洞察は必要であるし、ITへの洞察も必要である。洞察不在でPlantを作ってしまうと、非効率の巣窟となる。IT部門がより主体性と責任を持って、効率的なPlantにしていかなければならない。こういった現代的なIT投資、組織のモデルは、下記4つのモデルを包含したものになっている。
(1)事業成長連動型IT投資成長モデル
経営が10%成長を志向するならば、IT投資も同様に成長を志向する。経営が縮小を志向するならば(株式会社ではあまりないことだが…)、IT投資も同様に縮小を志向する。
実際には、事業の成長指標とIT投資の増減は常に一致するとは限らない。事業の種類や成長ステージによって、IT投資の伸びの方が大きくなる場合もあれば、部長との会話の中で出てきたように、IT投資の伸びの方が小さくなる場合もある。どのように二者の関係を定義するかは、各社の経営者の意思や、経営資源としてのITの位置づけで決まってくる(例えば、人員の削減をIT活用による生産性向上で補うという考え方があるだろう)。
これを実現しようとすると、SOAや仮想化などの現代の技術の導入は不可避である。なぜなら、管理性が高まるように個別の案件を“小さめ”に設定することが重要になるからだ。この投資管理ができるようになると、事業成長連動型IT投資成長モデルはより強力な投資モデルとなる。
(2)Service Oriented Organizationモデル
これは筆者の造語だ。IT組織も「どのようなServiceをユーザーに対して提供するか」から組み立て直していく必要がある。メニュー化を検討できればさらに望ましい。どういうサービスが必要となり、求められるのかは、社内の“IT利用市場”の動向で決まるだろう。現実的なサービス価格を検討し、その価格で提供できる水準のサービスを整備することが重要だ。
実際には、技術の導入レベルは業務領域や事業ごとに異なる。したがって、オールオアナッシングではなく、複数のServiceを組み合わせて提供することになるだろう。
Serviceの価格設定と原価計算の把握は、今以上に精密に行われないと即座に赤字転落する。したがって、IT部門の経営管理能力の向上とあわせて実施される必要がある。
(3)Marketing型要件定義モデル
Serviceとしてユーザー部門にITサービスが提供される場合、その企画や仕様の責任の多くはIT部門が負うこととなる。したがって、社内IT活用状況について市場調査を行い、ニーズに基づいて必要なITの仕様を定め、開発することが非常に重要だ。
ニーズの多くは業務や事業によって異なる。しかし、IT部門の努力でより同一に近い状態を作り上げることも可能だ。実際のニーズのバラつきとIT部門の能力などを勘案して落とし所を探り、社内市場への浸透を図っていくプランニングは、とてもエキサイティングなものとなるだろう。
これを実現しようとすると、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の整備が欠かせない。どの事業、業務がどういう方向を目指しているのか。どういうアプリケーション構成をそこに当てはめ、どういう技術構造をアプリケーションに適用するか。全体の仕様の管理を担い続けることが業務運営の核となっていく。