独SAPは2010年5月、モバイルの強化を目的に米Sybaseの買収を発表した。2010年8月に買収を完了後、Sybaseは独立したSAPカンパニーとして製品開発を進めている。同時にSAPは営業部隊を組み、まずはSAPユーザーのモバイル化のニーズに応えている。
5月、米オーランドで開催された「[SAPPHIRE Now 2011]」で、2011年1月よりSAP顧客向けにSybase製品のセールスを率いるグローバルモビリティ&Sybaseソリューション担当シニアバイスプレジデントのChris McClain氏に話を聞いた。
ライセンス売上は週1200万ユーロ(約14億円)
McClain氏によると、Sybase製品のセールスは「2四半期で81社を獲得した」状況。全てSAPの既存顧客だが、Sybaseにとっては新規顧客となる。これら81社は、地理的にも規模からみてもさまざまで、小売、公益、石油ガス、ハイテク、自動車などフィールドサービスが重要な企業が多いという。
「2011年のセールスパイプラインは7~8倍に拡大している。ライセンス売上げは週1200万ユーロ」とMcClain氏。モバイルはあらゆる顧客企業から注目されており、この数字はさらに増えると見込んでいる。
今年のSAPPIRE Nowでは、約20種のモバイルアプリケーションを発表した。Sybaseのモバイルプラットフォーム「Sybase Unwired Platform」(SUP)をベースとしたもので、小売、食品・消費財向けが中心だが、エンタープライズ資産管理、人事、調達などのアプリケーションもある。
SAPのアプリケーションに加え、Accenture、IBM、CapGeminiなどのパートナーもアプリケーションを開発している。なかでもAccentureとは、SUPとAccentureのモビリティサービスを組み合わせたモバイルソリューションの開発と実装で提携を発表している。当初は石油ガス、食品・消費財などに業種を絞って提供するが、進展を見て業種を拡大する計画だ。
モバイル分野のセキュリティやデバイス管理機能を提供する「Afaria」とSDKの組み合わせにより、一度開発するとさまざまなモバイル端末に実装できるエンタープライズモバイルアプリケーションを構築できる、とMcClain氏はメリットを強調した。
サイベースのアプリケーションストア開設構想
SAPは現在、SAPとパートナーのサービスを集めた「Eco Hub」を持つ。220万人がアクセスするサービスだが、今後これをアプリストアに発展させたい考えだ。
この新アプリストアは、社内で「優先度高」として専門チームが開発にあたっており、第2四半期から第3四半期に登場する予定。「(Appleの)App Storeのように、容易にアプリケーションを探して購入できるエクスペリエンスを提供する」とMcClain氏は述べる。
これだけでなく、顧客企業がアプリストアを展開できるようホワイトレーベルのストアとしても提供する計画だという。
「人事、財務、サプライチェーンなど、プリパッケージアプリはわれわれが得意とする分野だが、顧客は拡張やカスタマイズを施して生産性アプリ、フィールドサービスなどを構築している。ホワイトレーベルストアを利用して、これらのサービスを提供できる」(McClain氏)