国士舘大学は、日本マイクロソフトと連携し、学生向けサービスの充実を目指して、学内に点在するさまざまなシステムをフルクラウド化することを決定した。大学内システムの全面クラウド化は、国内初という。日本マイクロソフトが6月30日に発表した。
同大学は、少子高齢化や教育ニーズの多様化という社会的な背景のもと、学生向けサービスにクラウドを全面活用することで、学生に対して場所や時間を選ばない、ICTを活用した学習環境を提供し、学生向けサービスを充実させることで他大学との差別化を図るという。年間約9億6000万円に上るICT関連経費を削減することで経営体質の強化も目指すとしている。
国士舘大学では、フルクラウド化にあたり、さまざまなベンダーから提供されているクラウドサービスを比較検討した結果、マイクロソフトのクラウドサービスを採用した。具体的には、入試管理、履修管理、eラーニング、学術リポジトリ、図書館、就職支援、財務会計、人事給与など個別に管理していた学内システムを、PaaS「Windows Azure Platform」、SaaSの「SharePoint Online」や「Dynamics CRM Online」、「Live@edu」に完全移行する。採用では、開発生産性、運用コスト、システム間連携や横断検索などの機能を評価したという。
4月から入試管理、履修管理、学術リポジトリなど一部のサービスの移行が行われ、9月までに完全移行を予定している。今後、データ容量に縛られないというクラウドの特長を活かして、学生が在学中に残す資料やレポート、学内のコミュニケーションの履歴をすべて蓄積し、活用したいとしている。ホストコンピュータの廃止と約200台のサーバのクラウド環境への移行で、約30%のコスト削減を見込んでいる。
国士舘大学は、クラウドを全面活用することで、学生向けICTサービスも提供する。学内SNS「Kaede-i」、学術リポジトリ「i-Lib kiss」で構成される。
Kaede-iは、学科別やゼミ別、サークル別などの学生コミュニティの形成を支援するとともに、学内コミュニケーションを促進する学内SNS。同ツールのチャット機能で教員と学生、学生間のコミュニケーションを活性化するのが目的だという。画面上に顔写真が表示されるため、教員にとっては個々の学生を把握しながら、きめの細かい指導が可能になるという。将来的にはSNSによるコミュニケーションの履歴を自動的に蓄積、分析することでサービス向上に役立てたいとしている。
i-Lib kissは、学生一人ひとりに、学習に利用した資料や作成したレポートなどを保存できるサービス。在学中だけでなく、卒業後も生涯にわたって利用可能という。国士舘をはじめ、駒澤、昭和女子、成城、東京農業、東京都市が参加する「世田谷6大学コンソーシアム」で同様のリポジトリサービスを共有し、新しい学術情報ネットワークを構築する構想がある。