山口:それとはまったく逆に、「Hadoopを使って何かしたい」という要望も多いのです。課題が先にあるのではなくて、Hadoopが前提にあって、これで新しいことをやりたい、と。IT企業では新しいシステムをどんどん提案していく必要があるので、そういった背景も導入を後押ししているのかもしれませんね。
冨田:Hadoopの利用を前提にするケースは面白いですね。つまり、“Hadoopの利用”をスタートに設定してしまえば、そのシステムにビッグデータがあるのかどうかが不問に付されてしまうのですから。いや、ビッグデータは確かにあるというなら、そこにはどんなデータがあるんでしょうか。
濱野:現時点で、という話であれば、議論は難しいと思います。すでにデータを持っているという認識では、やはりウェブ系やエンタープライズ系の企業が中心になってきます。これは今あるデータを活用したいというニーズですね。
その一方で、ITの活用ということを考えた場合、技術者としてはITシステムの新しい価値を見出していく必要があるわけです。どうやってデータを集めて、どういう形で活用していくかを考えることによって、新しいビジネスにつながるかもしれないわけですから。その要素のひとつとして、大量データ処理が可能か否かという話になるのではないでしょうか。
山口:現状では、どの企業もコスト削減という点だけでは限界にきているので、売上アップのためには新しい価値を付け加えていく必要が出てきています。それがHadoopに対する期待につながる部分もありますね。
石川:リクルートの場合、検証を始めた最初のきっかけは、バッチ処理が遅くてニーズに追いつかないということでした。既存のリレーショナルデータベース(RDB)のしくみでは近いうちに限界がくるので、もっと安くて簡単に大量データ処理をできる手段はないかということで、Hadoopに目をつけたんです。
ただ、実際に検証してみた結果、単にバッチ処理の代替にできるというだけではなくて、別の価値を見出すことができました。たとえばマイニングを行ったりとか、統計を取ったり、いろんな処理をするのに適しているということが分かったんです。
冨田:なるほど。“Hadoopの利用”からスタートしても、技術のための技術で終わらず、新しい付加価値の創出につなげられるのですね。
(中編につづく)