山口:まだ検討段階のものが多いのですが、ひとつはPOSのようなシステムでの活用ですね。夜間バッチで処理された売れ行きや在庫などのデータを、翌朝になってから見ても、現場レベルでは対応が遅れる場合があります。もっとリアルタイムな情報活用が必要なんです。
たとえば商品の発送や販売などの情報を組み合わせれば、新しい仕組みを作れるんじゃないか。そういう部分での活用を模索しています。
冨田:とある大型家電量販店のケースを思い出しました。家電量販店は大量の品目を少量ずつ持たなければいけません。そのため、ひとつの商品が一度に売れると、すぐに在庫が無くなってしまいます。だからこそ在庫管理が重要になるのですが、ビッグデータを活用すれば、もっとリアルタイムな管理が可能になりますね。商品が無くなりそうなシグナルが出たときに、本部が「隣の店舗から補充しろ」とか「テレビで紹介されたから売れ始めたようだ、すぐにこの商品を確保しよう」などと指示を出せますね。
山口:そう、「無くなりました」では遅いんです。「無くなりそう」というタイミングを把握して、先に手を打たないと。それができれば、いつでも在庫がある店として、他店との差別化につながります。
濱野:山口さんがおっしゃるとおり、主要なデータを捉えて予測するのは、昔からやっていることなんです。ただ、それだけではもはや差別化にはつながらないので、もっと細かいデータを活用する必要が出てきているんですね。それをシステムでどうやってサポートしていくのかが重要になってきている、と。
山口:これまではサンプリングした一部のデータしか見ていなかったんですが、これからは全体のデータを対象にしなければいけない。そういう意味では、サンプリングという世界から、よりリアルな世界に移ってきたとも言えます。
濱野:サンプリングが適切に働かないケースというのもあります。たとえば個体差がある商品や、新しい商品、ニーズが多様化しているような分野の商品などは、一部の例を見ただけでは正しい傾向がつかめない。
冨田:部分ではなく、全体のデータが活用の対象になるという喩えは分かりやすいですね。石川さん、リクルートではこの点についてどう取り組んでいるんですか。
石川:最近では製品やサービスごとに様々な付加価値をつけて差別化を行っているので、そういった多様化が消費行動にどうつながっているかを把握する必要がでてきました。以前はまだ製品の多様化も未熟だったので、全件分析のニーズも薄かったんですけど、これからはそういうわけにはいきません。分析まで含めたデータの活用が必要で、Hadoopに期待しているのはそういう部分ですね。
「分析」をシステムに組み入れる
冨田:今後、ITや経営などあらゆる点で「分析」が極めて重要なキーワードになるという見通しは確かにあります。データ活用に分析が加わることで、何がどう変わると考えていますか。