継続的イノベーションで「世界一の顧客志向」目指す--Amazon Web Services(前編) - (page 2)

聞き手・構成=田中好伸 (編集部) 文=吉澤亨史 2011年07月18日 06時00分

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 AWSの強み、特徴は3点挙げることができます。1つめは柔軟性です。OSやプログラミング言語、ソフトウェアで顧客を囲い込むことは一切ありません。顧客は、AWSのサービスと他のプロバイダーのサービスを自由に選んで組み合わせて使うことができますし、使わないという選択もできます。

 2つめは低コストです。「今後10年間どんなに状況が変化しても、AWSのサービスはどんなに高価でもいい」という顧客はいないでしょう。このため、規模の経済から受けた恩恵を顧客に還元して、コストを抑えています。事実、この5年間で十数回の値下げを行うことができました。

写真 工学博士の資格も持つWerner Vogels氏

 具体的には、7月1日付けでAWSに転送されてくるすべてのトラフィックコストを無償にし、同時にクラウドから顧客へのトラフィックもコストを引き下げました。これによりコストが40%下がった顧客もあります。

 最後に挙げるのは惜しみないイノベーションの探求です。顧客に対してよりよいサービスあるいは新しいサービスを提供するために、顧客と密に連携し、声を聞いてきました。そのすべてが、あらゆる競合他社と違う点だと自負しています。サービスを担当する各チームが顧客とコミュニケーションを取り、フィードバックを受け取り、継続的なイノベーションを顧客に代わって実行していきます。

 まとめると「顧客を囲い込まない柔軟性」「継続的な価格の引き下げ」「必要とされる機能を提供するための継続的なイノベーション」――この3つがAWSの強みであり特徴です。

――GoogleFacebookなどは、自社のサービスを提供するためにサーバを独自に改造しています。AWSではいかがですか?

AWSの主な動向(2)
内容
2009 1AWS Management Consoleを発表
2IBMがEC2のAMIを提供
3WindowsとEU地域でのAmazon EC2関連サービスを拡充
Amazon EC2リザーブド インスタンスを導入
AWS Toolkit for Eclipseを提供
4Amazon Elastic MapReduceを発表
Amazon EC2リザーブド インスタンスを欧州で提供
5データの物理的移動を行うAWS Import/Exportを導入
Amazon CloudFrontにアクセスログ機能が追加
IBMがAmazon EC2用Development AMIを追加リリース
Amazon CloudWatch、Auto Scaling、Elastic Load Balancingを提供
10Amazon Elastic MapReduceがApache Hiveをサポート
Amazon EC2ハイメモリ インスタンスを提供
Amazon Relational Database Service(RDS)を導入
11Amazon CloudFrontでプライベートコンテンツ機能をサポート
AWSがSAS70 Type II 監査を完了
AWS SDK for .NETを発表
12Amazon EBSからAmazon EC2インスタンスがブート可能に
カリフォルニア州北部で新たにAWSのリージョンが利用可能に
AWSがImport/Exportのインターナショナルサポートを発表
Windows Server 2008とSQL Server Standard 2008を提供
Amazon EC2スポット インスタンスを発表
Amazon Virtual Private Cloud(VPC)からUnlimited Beta of Amazon VPCが発表
Amazon CloudFront Streamingを発表
AWS Management ConsoleがElastic Load Balancingを追加サポート

 AWSでは、ハードウェアはエンタープライズレベルのものを使用しています。こういったサービスではしばしば安価なホワイトボックスを使うという神話がありますが、AWSはそうではありません。いろいろなサプライチェーン、ベンダーと取り組みを進めており、サプライチェーンはどれも耐障害性を盛り込んであり、ベンダーが使うコンポーネントについても、1つの原因ですべてがダウンしないような思想で設計しています。

 このようにサーバのハードウェアの設計は自社でやっていますが、作ってくれるのはメーカーです。わたしたちの仕様書に沿って製造してもらっているわけです。サーバの信頼性には特に注意を払っています。ストレージ側で使っているサーバはソフトウェアである程度隠せますが、演算用のサーバは顧客が事業活動で使用するため、極めて高い信頼性が不可欠です。高い水準で品質が担保されていくよう、メーカーと連携しています。

 ちなみに、どのくらいの量になるかというと、Amazon.comの2000年の売上高が約27億6000万ドルでした。その2000年の1年間で必要とした量を今では毎日追加している状況です。

ERPやCRMの業務系システムもAWSで

――AWSはネットサービス企業に多く使われている印象を受けます。他の業種はいかがでしょう?

 ネットサービスは間違いなくクラウドに格好のアプリといえます。トラフィックが増大し、イベント数が指数関数的に増える状況にも柔軟に対応できるためです。しかし、ネットサービス企業にとどまらず、今では多くの企業が広範にマーケティングキャンペーンを実施しています。

 企業のネット活用は、5年前はウェブサイトを立ち上げて終わりでした。それが今ではウェブサイトのほかユーザー生成コンテンツ(UGC)にも対応し、ビデオのストリーミングやカジュアルゲーム、FacebookやTwitterにも対応しています。ユーザーが求めるものが増え、取り扱うものも劇的に増えた現在、クラウドはまさにネット上のビジネスに合致するのです。そのため、ネットサービスでのクラウド利用は大幅に増加していますが、そこにとどまりません。

 世界190の国と地域で何十万もの顧客が毎日AWSを利用しています。選ばれる理由は、多くのことと連携できる点にあります。災害復旧(DR)や人事、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客情報管理システム)などの業務、負荷試験や開発環境、アプリケーションサーバとの連携など、いろいろなものと連動させて利用しています。

 その中で非常に大きいのは、データ解析の分野です。データ解析やビジネスインテリジェンス(BI)、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)といった従来型のものを使っている顧客も多いですし、最近話題の“Big Data(ビッグデータ)”の考え方に則って実践している顧客も増えています。このように、クラウド上では数々のアプリが実行されています。

 業種でみると、ネットサービスだけでなく金融や石油、自動車、製薬などの業種でもクラウドが活用されています。ミッションクリティカルな基幹系で利用している企業も少なくなく、なかには100%クラウド化している企業もあります。グロバールサプライチェーンを展開するAdvanced Innovationsという企業は、Oracleなどのシステムを100%クラウド化しています。

 クラウドの活用は業界も利用方法もさまざまで、大企業が基幹系で使うこともあれば、コアアプリで使っていることもあります。ある石油会社がHPCに使っているケースもあり、とにかく多くの企業が広範にわたるアプリを実行しており、AWSの利用方法は特定分野にとどまりません。

 日本でも多くの企業がAWSを利用しており、データの分析や解析に用いているソネットエンタテインメント、リクルートの不動産系サイト「SUUMO(スーモ)」、オリンパスの画像共有サービス、ソーシャルゲームサイトの「gumi」などが挙げられます。料理レシピサイトのクックパッドもデータ解析のためにAWSを活用しています。

 実際にこういった企業の方と話をすると、クラウドを事業継続性の実現のために利用されるケースも多くなっています。

後編を掲載しました

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