CRM On Demandはプライベートクラウドあるいは仮想プライベートクラウド形式での利用も可能だが、あくまでも根本はパブリッククラウドが中心だ。パブリッククラウドは「コストが安い、自動的に機能強化される」などのメリットがあるが、「ユーザーごとのカスタマイズがしにくい」というデメリットもある(「ユーザーごとのカスタマイズがないからこそパブリッククラウドはコストが安い」とも表現でき、裏表の関係とも言える)。CRM On Demandでは、ユーザー企業ごとのカスタマイズ環境として「Hosted Code」と呼ばれる機能も提供する。
「PaaSに近い」(山瀬氏)という機能であるHosted Codeは、プログラムを組むことで画面やビジネスプロセスを拡張できるというものだ。HTMLやJPG、GIF、SWF、CSSなどのファイルに対応している。この機能を活用すれば、たとえば「入力時の画面遷移を少なくする」(山瀬氏)といったことも可能だ。
SaaSだけではなく、ウェブベースのアプリケーションは、どこからでも利用できることがメリットだが、画面遷移が多くなりがちという課題を抱える。SaaSではありながらも、入力時の画面遷移を増やしたくない、表計算ソフトのように1つの画面で必要な情報を入力するといったことがHosted Codeで可能になるわけである。
保険業界向けに代理店管理機能
(4)の業種別ソリューションの強化では、医療業界向けと保険業界向けの機能を強化している。保険業向けには「Partner Relationship Management(PRM)」という機能を搭載している。保険業界の場合、保険会社ではなく、代理店が実際の顧客と対面するのが一般的だ。そうした実態を支援するものとしてCRM On Demandでは、PRMを搭載している。この機能は、代理店の対顧客活動を支援するというものだ。
たとえば「Aという生命保険にはBという特約を付ける」といったように保険商品はさまざまな制約が多い。PRMには、オラクル独自のルールエンジンを活用して、そうした複雑な商品構成を代理店が把握することができるようになっている。
実際に使ってから検討すべき
この1~2年でSaaSを中心に企業でのクラウド活用が進む一方で、クラウドに対する不安を漠然と感じる企業も多いのもまた実態だ。
IaaS/PaaSを2006年から提供するAmazon Web Services(AWS)の経営にかかわるWerner Vogels氏(Amazon.comの最高技術責任者を兼務)が言っているように、クラウドサービスを提供する事業者は、自ら運営するサービスが安全であることを外部、つまりはユーザー企業にはっきりと示す必要がある。安心を得られて初めてユーザー企業は、自らの業務の一部にクラウドを組み込むことができる。こうした課題に対し、山瀬氏は、以下のようにCRM On Demandの安全性を強調する。
「CRM On Demandは、中核のデータベースとしては『Oracle Database 11g』を活用しており、『Oracle Database Vault』と呼ばれる暗号化機能も活用している。システムの運用も対象にした、監査基準『SAS70 TypeII』の認証を年3回取得している。安全性ははっきりと証明されている」
漠然と不安を感じるから活用をやめてしまうのではなく、試用してみて、セキュリティやパフォーマンスなどの非機能要件も確かめた上で活用することをオススメする。